本研究は、ブータンにおいて、農村から都市への人口の流出が、農村社会にどのような影響を与えているかを検証することを主な目的とした。農村から都市への人口の流出は、ブータンでは1990年代後半ごろから社会的な問題として認知され始め、近年、その動きはさらに大きくなっている。本研究は、そのような状況のなかで、農村の人びとの生活が人口の流出によってどのような影響を受けているのかを現地での聞き取り調査から、明らかにしようとしたのもである。その結果、労働力不足による休耕地の増加や農業生産の減少だけでなく、在来種に関する「知」の喪失など、経済面だけでなく、社会面、文化面にわたる多様な影響が明らかになった。
|