研究課題/領域番号 |
15K01873
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
萩尾 生 東京外国語大学, 特命事項担当室, 教授 (10508419)
|
研究分担者 |
奥野 良知 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (20347389)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | バスク / カタルーニャ / パラディプロマシー / 対外政策 / 文化外交 / 在外同胞 / ナショナリティ / テリトリアリティ |
研究実績の概要 |
当初の研究計画を若干軌道修正した。具体的には、当初予定していたパリとブリュッセルに設置されているバスク自治州政府とカタルーニャ自治州政府の出先機関に対する聴取を中止した。その理由は、「バスク」の場合、2015年末にナバーラ自治州初のバスク・ナショナリスト政権が誕生して政策の大きな転換が進行中であるほか、翌2016年秋にバスク自治州政府の改組が行われたこと、そして「カタルーニャ」の場合、カタルーニャの独立の気運がかつてないほど高まってきていることなどから、スペイン国内のバスク自治州とカタルーニャ自治州ならびに両者の隣接自治州の現状分析を優先させるべきと判断したからである。 こうして、まず「バスク」に関しては、改組後のバスク自治州政府対外活動関係部署に対して聴き取りを行い、新たに策定された「バスク国際戦略2020」の分析を行った。また、バスク・ナショナリスト政権下の新たなナバーラ自治州政府に対して現状の聴取を行い、同州の対外政策が経済分野において先行しているものの、それ以外の分野では、まだ模索状態であることを確認した。 一方の「カタルーニャ」に関しては、昨今の「カタルーニャ」独立に関連した政治日程が同自治州の対外政策に及ぼしかねない影響に配慮しつつ、カタルーニャ自治州政府及び関連団体に対して聴き取り調査を実施した。さらには、隣接するバレンシア自治州とバレアレス自治州の政界、学界、文化人に対しても、「カタルーニャ」意識に対する境界区分原理を探る観点から聴き取りを行った。 なお、スペインの対外活動における中央政府と自治州政府の関係を新たに規定し、後者の活動に一定の制限を設けた2014年3月の「マルガリョ法」については、その後の中央政府の組閣をめぐる混乱から必ずしも十全に施行されていないことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主な理由は2つある。 1つは、昨年度の実施状況報告書において述べたとおり、研究代表者の所属機関変更に伴う諸手続により、平成27年度(2015年度)末に予定していたフランス領バスク地方での聴取をキャンセルしたことによる。 もう1つは、研究分担者が平成28年度(2016年度)中に予定していた2回の現地調査のうち、1回が先方との日程調整がつかず、結果的に1回の現地調査しかできなかったことによる。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成29年度には、上記「現在までの進捗状況」において述べた、2つの未完の現地聴取調査を実施するほか、過去の現地調査を通じて行った言説分析から生じたさらなる疑問点について再確認するための現地調査を実施する予定である。 具体的には、まずスペイン領について、バスク自治州政府とナバーラ自治州政府関連機関への再調査、カタルーニャ自治州政府と、バレンシア自治州政府ならびにバレアレス諸島自治州政府関連機関への再調査を行う。そして、フランス領について、同国バスク地方とカタルーニャ地方における聴き取り調査を年度後半に実施する。調査対象先としては、前者の場合、スペイン・バスク自治州政府の出先機関がないため、ピレネー・アトランティック県の機関、ポー大学、バスク文化研究所を、後者の場合、スペイン・カタルーニャ自治州政府の出先機関、ピレネー・オリアンタル県の諸機関、ペルピニャン大学を候補としている。 年末から年明けにかけて、収集したデータをもとに総括作業を行い、年度内に報告をまとめる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前述したとおり、初年度と2年度目に、研究代表者と研究分担者の現地調査がそれぞれ1回ずつ遂行できず、後年度に調査時期をずらしたため、その分の外国旅費時期が遅れている。
|
次年度使用額の使用計画 |
最終年度の3年度目に、研究代表者と研究分担者の現地調査回数をそれぞれ1回ずつ増やすことによって、所期の研究計画を達成できる見込みである。なお、現地調査の時期が当初よりも後ろにずれたものの、全ての研究期間を通じての現地調査回数は、当初計画どおりである。
|