本研究は、アフリカにおけるFC・FGM/C(女子割礼・女性性器切除)の現状とその廃絶運動に対する当該社会の反応を包括的に理解することを目的じ実施した。欧米主導によるトップダウン型のアプローチの廃絶運動の多くが「当該コミュニティとの認識の乖離」という問題に直面しているという状況を解消する方途を探り、<ボトムアップ型=民族誌的アプローチ>による当事者主体の廃絶運動の構築を目指した。 このために、本研究では、(1)FC・FGM/Cをめぐる選択肢の多様化とその選択のプロセスを解明した。さらに(2)女性の社会的地位やアイデンティティとFC・FGM/Cに関する選択の関連を分析した。また(3)状況の異なる地域間の比較・分析をとおしてFC・FGM/Cと女性の社会的地位に関わる問題群の多様性を多角的視点から総合的に解明した。 ケニアでは18才未満を「子供」と位置づけ、2001年に制定された子供法によって18才未満の女子に対するFC・FGM/Cが禁止された。さらに、2011年には「反FGM法(Prohibition of Female Genital Mutilation Act)」が制定された。現地調査により、現在では、実際に禁固刑に処されたり、罰金を支払ったりした人を目の当たりにするようになり、人びとにとって廃絶の動きが無視できないものとして現前していること、また、施術の地下化の進行が明らかになった。さらに注目すべきこととして、近年、FC・FGM/Cを行う/行わない、という選択肢だけでなく、行い方、施術方法にいくつもの選択肢がうまれていることが明らかになった。また、国際NGOなどが廃絶をうながす多数のプロジェクトを展開していることを背景に、人びとの中でも廃絶派が誕生し、コミュニティの分断が見られた。
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