研究課題/領域番号 |
15K01876
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
外山 文子 (坂野) 京都大学, 東南アジア研究所, 研究員 (50748118)
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研究分担者 |
玉田 芳史 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90197567)
伊賀 司 京都大学, 東南アジア研究所, 研究員 (00608185)
日下 渉 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80536590)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 議院内閣制の大統領制化 / 与党内の政治権力構造 |
研究実績の概要 |
本研究は、東南アジア諸国における強力な政治指導者の登場と終焉に注目し、彼らを生み出した政治体制の共通点と相違点を比較検証するものである。これまで東南アジア諸国では、強力な政治指導者が多数登場してきた。彼らは選挙により選ばれたという正当性を持つにもかかわらず、一部の者は伝統的エリートから反撃を受け失脚し、政治体制も権威主義体制へと後退した。本研究では、好対照の結末を迎えたタイのタックシン首相とマレーシアのマハティール首相に焦点を当て両者を比較することにより、東南アジア諸国における体制変動の構造を明らかにするものである。 初年度であった昨年度は、タイのタックシン首相とマレーシアのマハティール首相の共通て点と相違点について明らかにし、どのような方向からの切り口が適切であるかについて目共同研究者とともに議論を繰り返した。4月に全員で名古屋において会合を開催し、8月には3名でタイのバンコクにて2回目の会合を行った。 議論の焦点は、タイ及びマレーシアは議院内閣制を採用しているにも拘らず、タックシンとマハティールがなぜ大統領に匹敵する強力な政治的リーダーシップを発揮しえたのか、その要因についてであった。議論の結果、先進国の政治研究において近年指摘されている「議院内閣制の大統領制化」が両国で起こった結果であったとの結論に達した。また両国の相違点は、大統領制化が「制度化」して残ったか否かの点であるとの仮説を立てるに至った。ここから両国の与党内の権力構造に着目し、1本目の論文を執筆することで合意した。現在は、タックシンおよびマハティールの与党内での政治権力構造について比較検証を行っているところであり、2年目の今年夏に脱稿予定という状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2か国の比較検証の方法ついて議論を重ねたが、議院内閣制の大統領制化とその制度化の有無という切り口での比較が、非常に興味深い研究成果をもたらしそうだとの感触を得ているためである。またタイについては、現在は軍事政権であるため政治家へのコンタクトが難しいかもしれないとの懸念があったが、知人等を通じて現在も旧与党関係者が集まる場があることが判明したため、インタビュー等の調査も実行可能であることが確実となった。今年夏の脱稿を目標としている1本目の論文は、学術的に興味深いものとなりそうである。これらから、本研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
概ね順調であり、現在進捗中の(旧)与党内の政治権力構造の調査が終了次第、論文を執筆し投稿する。その後、今年の後半から、フィリピンのエストラーダ大統領との比較の視点を加えるため、もう1名の共同研究者との議論に入る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
15万円ほど予定使用金額よりも少なかった原因は、研究代表者がタイの旧与党の調査を実行するうえで旧与党関係者との伝手を探すのに手間取り、インタビュー調査などに入るタイミングが少し遅れたため、タイでの現地調査の一部が2年目にずれ込んだことが原因である。この予定変更は、現在のタイ軍事政権の強権的支配による政治家や研究者に対する締め付けが原因であり、今後も政治状況に細心の注意を払いながら研究を遂行していく予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
1年目に予定していた現地調査の一部が2年目にずれ込んだので、初年度に余った資金は2年目の現地調査に回す予定である。
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