研究課題/領域番号 |
15K01877
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹田 晋也 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90212026)
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研究分担者 |
鈴木 玲治 京都学園大学, バイオ環境学部, 准教授 (60378825)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 焼畑土地利用 / 東南アジア / インドシナ / 大陸部山地林 / 環境保全 / 山地民 / 長期観測 / シナリオ構築 |
研究実績の概要 |
ラオス北部A村で現地調査を実施した。これまでに蓄積した長期焼畑動態観測データを、高解像度衛星画像と組み合わせた土地利用図として現地に持参し、住民との対話・調査のツールとして活用した。2015年度の焼畑土地利用図を作成するために全筆のGPSマッピングと全戸を対象とした質問票調査を行った。2005年から毎年焼畑土地利用のモニタリングを継続しているA村では2008年度からトウモロコシ高収量品種LVN10が導入された。2012年秋には仲買業者と生産グループが契約を結び、トウモロコシ集荷道が造成された。トウモロコシ集荷圏に組み込まれたことでS村では従来の陸稲焼畑システムから、a)連作、b) 草地休閑(Chromolaena odorata短期休閑)、c) 叢林休閑(萌芽更新短期休閑)の3つを組み合わせた焼畑システムへと変化している。2008年のリーマン・ショックや天候不順といった短期的な要因がトウモロコシ国際価格の変動を増幅させてきたが、経済成長による畜産物需要が旺盛な新興国の需要増大や、バイオ燃料生産の拡大などの構造的な要因が国際価格を押し上げ、2012-2013年には最高値を維持していた。しかし原油安に代表される世界的な資源価格の下落を受けて、トウモロコシ価格も2015-16年には低迷している。一方で陸稲赤米の市場価格が高まり、陸稲商品生産が盛んになってきた。同時にA村では出稼ぎが少しずつ増えている。このように複数の現金獲得手段を各世帯は選択的に活用しているため、焼畑での自給陸稲生産がいっせいにトウモロコシ商品作に置き換わってはいない。しかしトウモロコシを連作した後の休閑植生の回復は困難であり、焼畑システムと長期的な土地利用の安定性を確保するためには、草地休閑と叢林休閑との違いを理解した植生回復への配慮が欠かせない。こうした市場依存がもたらす不安定性に対処しうる生活環境保全シナリオを村人との対話の中から検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラオスとミャンマーでの現地調査を実施するとともに、これまでの長期焼畑動態観測データの解析作業を進めている。ミャンマーで2012年に成立した農地法では、水田と常畑を対象に土地利用証明書の発行を通じた小農土地保有の合法化が想定されているが、焼畑はその対象外である。S村にも、最近の土地政策変化の情報が断片的に伝わりつつあり、各世帯は将来の土地所有権確保を期待して「水田アグロフォレストリー」をすすめている。19世紀末のカレン領域制定から焼畑耕作が続くS村では、自給用陸稲生産という基本的な性格は変わらないが、道路通信事情が改善され、そして学校教育が普及する中で、市場経済との接合が少しずつ進行してるている。こうした最近の構造的な変化を詳しく調べる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
ラオス・ミャンマーの両調査村でともに出稼ぎ労働が増加しつつあるので、今後は農外就業が農林地利用にどのような影響を及ぼすのか、さらには政府の土地保有保証が世帯ベース・村落ベースでの持続的な森林資源利用の実現のどのように寄与するのか注目している。今後はそうした変化の中での生活環境保全シナリオについてより具体的な調査を進めていく予定である。
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