研究実績の概要 |
6月にタイ・チェンマイ県で、11月にミャンマー・バゴー山地のカレン焼畑村落(S村)で現地調査を実施した。S村では、集落移転、タケ一斉開花、民間チーク造林地への転換、谷地田造成と住民林業の導入などを契機として、非農就労と谷地田とチーク林経営を組み合わせた農家林家が出現する可能性も出てきた。6月に短期調査に訪れたタイ・チェンマイ県のカレン村落では、高原野菜栽培と谷地田と自給焼畑に加えてマツを主とする林業が営まれていて、バゴー山地の今後の生活環境保全シナリオに示唆的であった。ラオス北部のA村では、2008年よりトウモロコシ高収量品種が導入されて、焼畑は徐々にトウモロコシ畑に置き換わりつつある。仲買業者との契約でトウモロコシ集荷道が造成され、商品作集荷圏に組み込まれたことで、従来の自給陸稲焼畑システムから、a)連作、b)草地休閑(C.odorata短期休閑)、c)叢林休閑(萌芽更新短期休閑)の3つを組み合わせた焼畑システムへと変化している。トウモロコシ長期連作後の休閑植生の回復は困難であり、草地休閑と叢林休閑の違いを理解した植生回復への配慮が必要である。休閑地でのNTFP生産は、生活環境保全に寄与すると期待できる。ムカゴコンニャクやインドジャボクは、雨季に根と球茎から地上部を発達させ、乾季には地下部を残して休眠する。こうした生育特性を持つことで、焼畑の伐開・火入れとも共存できている。そしてこれらのNTFPは、すべての世帯の現金収入源となり女性や子供にとって現金収入源として重要である。2つのNTPSの生育立地と経済機会の組み合わせが、焼畑世帯の生計維持と森林の保続利用の両立を可能としてきた。以上の結果をMountain Research and Development, Forest Ecology and Management, Economic Botany誌上などで発表した。
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