研究課題/領域番号 |
15K01883
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
吉田 信 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (60314457)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 植民地法制 / 蘭印 / 英領マラヤ / 婚姻 / 国籍 / 市民権 / 帝国 / 東インド |
研究実績の概要 |
今年度は以下の実績を上げることができた。 まず,資料調査については,ロンドンとオランダで調査を実施した。ロンドンでは国立公文書館と大英図書館を調査先として訪ねた。オランダでは,ハーグの国立公文書館,王立図書館,ライデンのライデン大学図書館を訪ねている。 ロンドンでの調査の結果,英領マラヤ,英領インドの婚姻法制に関わる一次資料を見つけることができた。特に英領マラヤにおけるクリスチャン,ムスリムに対する婚姻法制に関する資料は,大きな成果である。婚姻に関し学術誌に掲載された二次文献の収集も進み,前年度と比べると進展の度合いが大きい。他方,比較対象の事例である蘭印の婚姻法制についてはすでに前年度においてその研究成果の一部を論稿として公表したこともあり,基本的な資料についてはほぼ収集したものと考えている。とはいえ,この研究対象についても継続的に資料の調査を行った結果として,1930年代の蘭領東インドを対象とする婚姻法制をめぐる議論について一次史料を収集できた。今後はこれらの史資料を用いて論稿の執筆を進める予定である。 これら研究成果の一部については,9月下旬にオランダのライデンを所在とするKITLV(王立言語地誌民族学研究所)において報告する機会を得た。報告に加え,論稿としては,植民地期オランダ領東インドにおける国籍に関する論文を執筆する中で,婚姻による国籍の取得及び喪失に言及した箇所で研究の成果を反映させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は全体で3年間の研究計画に基づいて実施している。今年度は研究計画の最終年度にあたり,研究を総括する年度となる。 既に初年度において研究対象の一部に関する論稿を公表した。刊行された共著書において,オランダ領東インドにおける婚姻法制について詳述している。まず,蘭印において,ヨーロッパ系住民と現地住民とのいわゆる「雑婚」(通婚)の事例を扱った論稿を執筆した。次に,オランダ本国の婚姻規定の変遷と蘭印における婚姻規定の制定を比較整理した論稿を公表している。 以上のように,初年度の研究は,蘭印における婚姻規定を主たる対象とし,順調に進展したものといえる。続く2年目の研究では,英領マラヤにおける婚姻規定を主な研究対象とし,資料収集を進めた。その結果,英領マラヤにおける婚姻規定の概要を把握するために重要な一次史料を収集できた。研究の進捗に大きな影響を及ぼす資料を収集することができ,2年目の研究もおおむね順調に進展していると評価することができる。 最終年度となる今年度は,研究成果を総合するべく比較対象の具体的作業を進め,論稿及び報告の形で研究成果を公表していく予定である。現在まで英領マラヤにおける婚姻規定の概要を整理する作業を進めており,まずはこの研究テーマについてまとめた報告を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる今年度は,比較対象としている英領マラヤおよび蘭領東インドそれぞれの婚姻規定を整理し,研究成果を総合するべく論稿及び報告の形で研究成果を公表する予定である。 今年度前半は,前年度までに収集した英領マラヤに関する一次史料の分析を進め,当該植民地における婚姻法制の概要を整理する。可能であれば学会あるいは研究会において報告の機会を得て,他の研究者から批判的見地を寄せてもらうことを想定している。 今年度後半は,補足する資料の収集を国内外で進めつつ,英領マラヤおよび蘭領東インドの婚姻規定に関する比較作業を進めていく。これもいずれかの学会もしくは研究会において報告を行い,その後寄せられたコメント等を参考に,研究成果にさらなる検討を加え,論稿の執筆を進めたい。
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