研究課題/領域番号 |
15K01897
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
松久 玲子 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (40239075)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ラテンアメリカ / 家事労働者 / 女性運動 / 家事労働者条約 |
研究実績の概要 |
近代以降,家事サービスは市場化され,ジェンダー化された未熟練労働として低賃金,劣悪な条件のもとで歴史的に継続されてきた。現在では,国内だけでなく国境を越えて国際移動する女性の家事労働者の存在が顕在化している.ラテンアメリカ地域の有償家事労働者について、国内の状況および,グローバリゼーションの過程で起きている北―南・南―南の労働移動を含めた女性の国際的労働移動という2つの側面において,ジェンダー化され,階層化・人種化される再生産領域の分業化を歴史的連続性の中で分析することを目的としている。 2017年度は,ラテンアメリカ諸国における家事労働者条約の批准状況に関する文献調査を行ない、国連家事労働者条約の批准にあたりラテンアメリカ諸国の政府が取った対応と、家事労働者条約の批准のための準備プロセスや批准を達成するための組織的活動の多様性を明らかにし、論文として発表した。 現地調査としては、9月にメキシコにおいて家事労働者の実態調査を実施した。個人の家庭をサンプル調査し、雇用者、非雇用者双方から有償家事労働の実態についてインタビューを行った。この調査は、2016年度に行った調査の継続調査である。 メキシコでは政府機関である人権委員会において家事労働者条約批准のあたっての問題について聞き取り調査を行い、社会保険の加入が家事労働者条約批准の障害となっていることが分かった。また、家事労働者組合においてインタビューを行い、労働条件改善のための取り組みについて、調査した。また、家事労働者組合では、2016年度にできなかった書記長とのインタビューを行い、組合の活動や今後の活動方針について知見を得た。 また、植民地時代から1960年代の女性のの国内移民に伴う家事労働者の就労、200年代以降の国際移民と家事労働者について歴史的な視点から概要をまとめ、雑誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2016年度に病気のため調査開始が遅れ、その後調査の遅れを回復できていない。特に、歴史的な家事労働者の変遷について、メキシコの国立古文書館での調査が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の延長願いを受理されたため、今年度も引き続き文献調査およびインタビューを行い、成果の発表につなげる。 夏休み前までに、インタビュー調査をまとめる。8月ないし9月にメキシコの国立古文書館で歴史的な文献調査を行う。現在の調査はメキシコが中心となっているため、チリ,アルゼンチンにおいて家事労働者組合を訪問し、家事労働者条約批准に至る経過を聞き取り調査で明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度に脳梗塞を発病し、経過観察のため当該年度の出張をひかえた。この科研プロジェクトの他に、科研基盤研究(B)の代表者となっているため、その遂行に時間を割かざる得ず、予定年度中に基盤研究(C)の調査を完了することができなかった。よって、一年間の研究期間延長を行い、その間にメキシコ以外のラテンアメリカ地域における家事労働者組合の実態調査および家事労働者条約の批准状況の調査を行う。 また、引き続きメキシコ古文書館および図書館において、家事労働者に関する文献調査を行う予定である。
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