研究課題/領域番号 |
15K01899
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小田 尚也 立命館大学, 政策科学部, 教授 (30436662)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インド / 労働移動 / ジャート / ビハール |
研究実績の概要 |
前年度のビハール州農村部での家計調査データをもとにした労働移動の決定要因分析で、カースト分類で見た場合、低位の社会階層であるムスリムにおいては高い労働移動の傾向が確認されたが、指定カースト・指定部族(SC/ST)のモビリティが高くないことが判明した。本年度はSC/STの低い労働移動選好について分析を試みた。 要因の一つとして、SC/STの一般的に低い教育水準が指摘できる。低い教育水準により農業労働以外の職業選択の幅を狭めている可能性が考えらえる。このことは農業労働を主とするSC/STのサブカーストにおける労働移動率の低さによって示される。また労働移動に関する情報へのアクセスが限定的であることも一要因である。調査地のあるサブカースト集団では一人も労働移動者を出していないところがあった。村人は出稼ぎ労働移動に意欲を見せるものの、職業を斡旋するエージェントとの接触がなく、情報と機会が得られていない状況にあった。特に村の中心から離れたところに居住するマージナルなサブカースト集団にこのような状況が見られる傾向にある。このように、SC/STといっても一様でなく、サブカースト間(ジャート)の差異によりモビリティに大きな差異が存在することが判明した。 またケーララ、タミルナードゥ州において技能労働者、女性の出稼ぎ労働に関する調査を同時に実施し、低位の社会階層グループにおいて、労働移動は単なる経済的な目的を達成する手段だけでなく、社会的なステータスの向上のための戦略的な手段として取り入れられている現状を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた長期の現地調査が実施出来なかったことで、農村家計調査および村レベルのデータ収集に遅れが生じているため。
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今後の研究の推進方策 |
家計レベルのデータを使った労働移動の決定要因に関する定量的な分析の継続と、長期の現地調査を実施し、データの更なる収集と定性的な分析を行うことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度に予定していた現地調査を2017年度に変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
8月もしくは9月、および2018年2月に現地調査を行い追加の定量的、定性的なデータの収集を行う。
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