1、本研究課題は、近年の「帝国史」研究や「植民地近代」論をめぐる議論を踏まえて、現代韓国・朝鮮社会に連続する社会基盤整備として、朝鮮民族を支配の側に取り込んでいく戦時体制構築の前提となった「帝国秩序」なるものが植民地権力と対日協力者、地域住民(民衆)といった三者の「せめぎ合い」の結果、朝鮮社会に形成されたものであることを明らかにするものである。平成30年度においては、以下のような資料整理と研究成果の発表を行った。 2、韓国の国家記録院(ソウル情報センター)及び国史編纂委員会での史料調査・収集を行った。特に「公共的」施設として寺院その他に関する史料と朝鮮民衆の日記などの記録物についての調査・収集を行った。 3、本研究課題の研究成果として、植民地朝鮮における「公共的施設」の一つである神社の創建と在朝日本人との関係についての報告要旨を発表した(東京歴史学研究会編『人民の歴史学』219号、2019年3月)。 4、本研究課題の問題関心と関わって、(1)「帝国秩序」解明の前提となる、朝鮮史の通史的把握の現状を示す研究成果といえる、李成市・宮嶋博史・糟谷憲一編著『朝鮮史1・2』[世界歴史大系2](山川出版社、2017年)を朝鮮史研究会関西部会例会にて書評した(2018年4月28日、於河合塾大阪校セレスタ館3階会議室)。(2)植民地期の朝鮮社会における「帝国秩序」形成について考える際に、示唆を与える事例の一つとして、植民地期朝鮮における地域変容を港湾・漁村「開発」と地方住民との関係に着眼した研究成果である、加藤圭木『植民地期朝鮮の地域変容-日本の大陸進出と咸鏡北道-』(吉川弘文館、2017年)の書評を執筆した(日本植民地研究会編『日本植民地研究』30号、2018年)。
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