研究課題/領域番号 |
15K01904
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研究機関 | 島根県立大学短期大学部 |
研究代表者 |
塩谷 もも 島根県立大学短期大学部, 総合文化学科, 准教授 (90456244)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インドネシア / 服飾 / アイデンティティ / イスラーム |
研究実績の概要 |
平成29年度は、インドネシアのヴェールとムスリムファッションに関する研究・現地調査を中心に行った。これまでの研究成果については、平成29年度に出版された本Islam and Cultural Diversity in Southeast Asia-Vol.2-に掲載の論文で提示した。この論文では、ムスリムファッションについて、イスラームの信仰面からの「正しさ」に関心が集まる現象について考察した。肌の隠蔽の程度やヴェールの形によって、イスラーム的な「正しさ」を主張する近年の動きを論じた。この動きは、インドネシアの服飾文化において、衣服に関するルールが日常の場面においても、厳格であることとつながりがあることを指摘した。 研究期間全体を通じて、(1)作り手、(2)売り手、(3)買い手、(4)情報に焦点をあてながら、総合的にムスリムファッションとバティックについての分析をすることを研究目的としているが、この論文は主に(3)と(4)に焦点をあてたものである。ミクロな聞き取り調査に基づいて、分析している点に重要性がある。ムスリムファッションに関する研究成果については、一般向けの公開講座「インドネシアのムスリムファッションの現状」などを通じても成果提示も行なっている。 平成29年12月下旬から平成30年1月上旬にかけて、インドネシア中部ジャワ州において、現地調査を実施した。ムスリムファッションについて、チャダルと呼ばれる顔を隠すヴェールの着用が拡大している現象に注目した。研究機関を訪れて、現地研究者との研究に関する意見・情報交換も実施することで、研究についての再考も実施した。同時に現地で出版されている文献資料を収集した。 バティックについても製造を行なっている業者を訪問し、マレーシアなどにおける海外展開に関する聞き取り調査を行なった。バティックのグローバル展開については、今後さらに調査を行なう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドネシアのムスリムファッションとバティックのグローバルな展開について、具体的・実証的な研究を行なうことを目的とする本研究では(1)作り手、(2)売り手、(3)買い手、(4)情報に焦点をあてながら、総合的な研究を実施している。このうち、(1)と(2)の調査については、ジャカルタや中部ジャワでのムスリムファッションデザイナーやバティック製作者への聞き取りなどにより資料を得ている。また、その成果については、これまで数本の論文や一般向けの公開講座での「インドネシアのムスリムファッションの現状」と題する講演等において、公開してきた。 本年度はインドネシアについては、現地調査を通じて、(3)と(4)の資料収集について補強しつつ、研究のまとめに入る予定である。また、平成29年度の現地調査に入手したインドネシアの服飾に関する文献資料の分析を引き続き行ないながら、平成30年に実施する予定の現地調査の準備を十分に行う。また、バティックの海外展開については、平成29年度の調査においても情報を得たため、さらに調査を実施することで、ムスリムファッションも含めてさらにグローバル展開に関する考察を深める計画である。 研究全体については、おおむね順調に進行しているが、現地調査については、平成29年8月から9月にかけて予定していた中部ジャワとバリ島における現地調査について、計画を急遽変更せざるを得なくなった。時期をずらして実施したが、当初の予定よりも短縮したものとならざるを得なかった。そのため、バティックに関する中部ジャワとバリ島調査については、平成30年度に実施予定である。また、インドネシア調査については、西ジャワ州の調査をあわせて実施することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
調査成果の提示を平成30年8月に東京で開催予定の国際ワークショップにおいて、実施する予定となっている。口頭発表においては、とくにムスリムファッショに焦点をあてながら、近年のインドネシアにおける状況とその背景について発表予定である。この研究発表についてまとめる過程で、これまでの調査内容と補強の必要な点について整理を行ない、平成30年度に実施予定の調査内容についても、再検討を行なうことを計画している。 平成29年度に実施することが出来なかったバティックのグローバル展開に関する現地調査を、平成30年度8月末から9月にかけて実施する計画である。9月にはインドネシア(バリ州、西ジャワ州バンドゥン、中部ジャワ州)における調査をあわせて実施する。バリと中部ジャワの現地調査では、主にバティックに焦点をあてた調査を実施する。バリにおいては、バティックのワークショップに参加し、作り手とワークショップ参加者にインタビュー調査を実施する予定である。また、商品化されたバティックについて注目した調査も実施する。 西ジャワのバンドゥンにおいては、ムスリムファッションに関する調査とバティックも含めた調査を行なう。バンドゥンは、大学において早くからヴェールを着用する女子学生の運動が起きた町であり、ファッション産業が盛んな街でもある。そのため、ムスリムファッションおよびバティックのインドネシアにおける現在の動きを知る上では、きわめて有効な街となっている。 現地調査で得た資料の分析を実施し、文献調査の分析結果とあわせつつ、グローバル化する中でのバティックおよびムスリムファッションについての考察を深め、研究の集大成を行なう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:平成29年8月から9月に予定していたインドネシア(バリ州および中部ジャワ州)での海外現地調査が、家族が平成29年8月に死去し、実施できなくなってしまったため。別時期に現地調査を実施したが、当初の現地調査で予定していたほどの日数の滞在は不可能であった。こうした理由から、当初の見積もりに対して差額が生じた。
使用計画:2018年度に実施予定の海外現地調査のため、また国内での成果提示などの際に、主に旅費として使用する計画である。また、国際ワークショップで発表する際の英語原稿の校閲代、必要図書の購入等にあてることも予定している。
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