研究課題/領域番号 |
15K01904
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
塩谷 もも 島根県立大学, 人間文化学部, 准教授 (90456244)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インドネシア / 服飾文化 / イスラム / ヴェール / バティック |
研究実績の概要 |
平成30年度はこれまでの研究成果を整理することで、成果提示を行なった。国際シンポジウム「ムスリム女性のヴェールをめぐる学際研究」での発表では、これまでの文献研究とフィールドワークの成果を活用し、インドネシアにおける特にムスリムファッションの時代ごとの変遷を整理した。現在の状況については、調査の結果明らかになったイスラーム的な「正しさ」を主張しながらも、ファッションとのバランスをとる事例を活用した発表を行なった。 平成30年8月~9月には、シンガポールおよびインドネシア(バリ州、西ジャワ州、中部ジャワ州)において、現地調査を実施した。研究期間全体を通じて、ムスリムファッションとインドネシアの国民アイデンティティとも関わるバティックについて、(1)作り手、(2)売り手、(3)買い手、(4)情報、に焦点を当てながら多角的に分析をしてきたが、今回の調査はこのうち(1)作り手、(2)売り手に焦点をあてたものである。特にバティックに焦点を当てた調査を中心に実施した。 シンガポールでは、(2)売り手に関する調査を中心とし、インドネシアから入ったバティックが、どのように売られており、どのようなイメージを持つものとなっているか店舗で聞き取り調査を行い、同時にムスリムファッションを商う店舗での調査を行った。 インドネシアバリ州では、バティックのワークショップに参加することで、(1)作り手への聞き取り調査を行ない、(2)売り手についても、お土産として売られるバティックの実態調査を行なった。西ジャワ州では、州の特徴を生かして創造されたバティックの実態を調査し、同時にムスリムファッションの売られ方について調べた。中部ジャワ州においては、バティックの作り手への聞き取り調査を行ない、ムスリムファッションについての聞き取りも行なった。また、研究機関を訪れて現地研究者との意見交換、文献収集を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の特徴は、インドネシアのバティックとムスリムファッションのグローバルな展開について、実証的な研究を行なうことである。中心となる調査地は、インドネシア中部ジャワ州であり、これまでの調査においても同地を中心としてきた。その一方で課題となってきたのが、これまでの聞き取り調査では情報を得てきたインドネシアのバティックの海外展開の実態、インドネシアのそれ以外の地域の状況を調べることであった。 平成30年度の調査では、シンガポールにおける調査を実施することで、インドネシアのバティックの状況、さらにムスリムファッションについても調べることができた。また、バリ州と西ジャワ州の調査においては、インドネシア国内での違いについて考えるための資料を得た。これまでの調査においても、インドネシアの服飾に関して、(1)作り手、(2)売り手に関する調査は実施してきたが、それを他地域の状況を調べることで補強することが可能となった。 ただし、現地調査については、平成29年度8月に急遽中止せざるを得なくなった、マレーシアにおける調査が未実施である。この調査については、今年度に実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果とりまとめの年となりため、これまでの研究成果をまとめながら、現地調査における補足調査も併せて実施する。インドネシアの服飾について、時代ごとに変遷を整理する研究を子なうことで、これまでのバティックやムスリムファッションの位置づけを、より明確にする計画である。 成果提示としては、インドネシアで服飾に関するシンポジウムでの研究発表を実施予定である。研究対象としている地域において、研究成果についての助言等を受けることは、今後の研究においても非常に重要かつ有益なことであると考える。 現地調査については、8月~9月にかけて計画しており、その中で平成29年度に急遽中止せざるを得なくなったマレーシアでの現地調査も、実施予定である。インドネシアのバティックのグローバル展開について、平成30年度のシンガポールの事例に加えて、(1)作り手、(2)売り手に焦点をあてた調査を行なう。また、マレーシアは、インドネシアと同様に、ムスリムファッションについてユニークな展開をみせている国であるため、この点についても調査を実施する予定である。 インドネシアでも補足調査を行ない、中部ジャワ州において、これまでの調査の補足を実施する。また、バリ島においては、再び布に関するワークショップが実施予定であり、これに参加することで、インドネシアの服飾文化について考察を深めることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年8月に実施予定であったマレーシアでの現地調査が、家族の死去によって急遽中止した調査が、未実施となったため。平成30年度にはシンガポールおよびインドネシアでの調査を実施したが、日程の都合上、マレーシア調査を行なうことが不可能であり、差額が生じた。 使用計画は、この分の調査を実施するため、主に旅費として使用する計画である。また、成果提示用に英語原稿の校閲代、必要文献の購入なども予定している。
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