最終年度は、これまでの研究成果を活用しながらムスリムファッションに関して『東南アジア事典』への執筆、2020年度に出版予定の書籍に織布とムスリムファッションに関して記述した。令和2年3月にインドネシア科学院の国際シンポジウムで研究発表を行なう予定であったが、新型コロナウィルスの影響で急遽中止となってしまった。 令和元年8月~9月には、マレーシアおよびインドネシア(バリ州、中部ジャワ州)において、バティックを中心に服飾に関する現地調査を行った。マレーシアでは、インドネシアのバティックのグローバルな展開について調べるため、インドネシアのバティックを扱う店舗を訪れた。インドネシアのバティックが、マレーシアでどのように意識されているのかを明らかにするため、聞き取り調査を行なった。 インドネシアでは、バリ州で布の作り手を対象とした調査を行ない、織布のワークショップに参加することで、技術を伝承する取り組み、技術改良などの変化について、データ収集を実施た。また、ムスリムファッションとの比較考察のため、ヒンドゥー寺院における服装の変化に関する調査も実施した。中部ジャワ州においては、研究のまとめを行なうために補足調査をした。 本研究では、バティックとムスリムファッションに焦点をあて、インドネシアにおけるアイデンティティとグローバル化に関する調査・研究を実施した。服飾を通じてアイデンティティをグローバルな視点で分析することで、多民族国家のインドネシアにおける、新たな動きも明らかになってきた。また、ジャカルタで開催予定だったシンポジウムでは、インドネシアと日本における服飾とアイデンティティについて、比較を含めた考察を発表予定であった。今後はインドネシアに加えて、日本についても調査・研究を行なうことで、さらに服飾とアインデンティティに関する考察を深めたいと考える。
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