研究課題/領域番号 |
15K01905
|
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
菅瀬 晶子 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 助教 (00444141)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | アラブ・ナショナリズム / パレスチナ / イスラエル / キリスト教徒 |
研究実績の概要 |
本年度はイスラエル国内、およびヨルダン川西岸地区内の研究機関および大学図書館に調査対象を絞り、以下の内容について調査を進めた。 (1)ナジーブ・ナッサールの全著作の所在の有無とその状態 調査の結果、全著作を所有している研究機関および図書館はないことが判明した。しかしながら、ナッサールが主筆をつとめたカルメル誌については、ハイファ大学とアル・クドゥス大学付属イスラーム文化研究所図書館、およびベツレヘム大学に所蔵が確認できた。その他小説や書簡集、エッセイ集については、ハイファ大学で一部のみ所蔵されている。カルメル誌の初期の連載記事をまとめた主著『シオニズム』については、アル・ナジャーハ大学図書館の特別保管室に所蔵されている。 ハイファ大学のカルメル誌のマイクロフィルムは損傷が進んでおり、記事が部分的に欠落しているページも多い。これらはすでにオリジナルの段階で生じていた欠落であるが、欠落部分にナッサールの執筆箇所も多く含まれている。本研究課題において注目している、1908年~1920年の資料に欠落が多いのも問題点である。アル・クドゥス大学付属付属イスラーム文化研究所図書館とアル・アクサー図書館では、マイクロフィルムではなく現物が保管されているが、これも損傷が進み、閲覧に適した状態ではない。ベツレヘム大学には、カルメル誌の完全なコレクションが存在するが、機材の老朽化により現在は閲覧不可能である。 (2)データベース作成に向けての意見交換 ナッサール研究の第一人者であるベツレヘム大学のコスタンディ・ショウマリー教授、およびアル・クドゥス大学のハーレド・イヤーン氏と意見交換をおこなった。ショウマリー教授からは、データベースへの情報提供および監修の許可を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題で注目しているもうひとりのアラブ・ナショナリスト、グレゴリオス・ハッジャールについては、手がかりが得られず苦心している。彼の手記がレバノンで保管されているらしいという情報を得たため、それを確認するため、今年度おこなうことができなかったレバノンでの調査を予定している。また、ナッサールの著作は膨大であり、本研究課題ですべてをカバーすることは困難である。よって、彼のアラブ・ナショナリストとしての活動が顕著であった1908年~1920年代前半に、まずは的を絞るべきであると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の調査によって、カルメル誌の完全コレクションが大英博物館付属図書館にあることが判明した。次年度はこのコレクションのコピーを入手し、ことに1908年から1920年までのナッサール執筆記事に注目して、その内容の分析をおこなうことが最大の目標である。 また、データベースのひな形を次年度中に作成し、一般公開することをめざしている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度、他の研究テーマによる業務が多く残っており、二度予定していた海外調査に一度しか出ることができなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度おこなえなかったレバノンでの文献調査を実行する。
|