本研究では、近年ラテンアメリカで拡大している、企業形態をとる農業生産者(農企業)の実態を把握し、それが成立する条件や持続的発展の可能性、そして限界について分析した。分析対象としては、ペルー海岸部において青果物の生産と輸出を手がける企業と、ブラジル中西部で穀物生産を手がける大規模農業経営体を取り上げた。 前者については、以前から取り組んでいた研究の成果と合わせて単著にまとめた(清水達也2017『ラテンアメリカの農業・食料部門の発展』アジア経済研究所)。輸出向け青果物では、農企業が生産・加工(パッキング)・輸出を統合することで、農業部門の生産性を向上させ、青果物の付加価値を高められることを示した。 後者については、論文にまとめた(清水達也2019「ブラジル中西部における穀物生産者の経営拡大」清水達也編『途上国における農業経営の変革』アジア経済研究所)。家族を基盤にした数千ヘクタールを越える大規模農業経営体は、生産のほかに資金調達や穀物の販売に経営資源を投入することで、小規模経営体と比べて自律性の高い経営を行うことができ、成長につながっていることを示した。 農業では、生産要素市場(土地、資本、労働力、知識)や農産物の市場、そして生産の技術が大きく変わりつつある。このような変化に積極的に対応して、生産を拡大する農業経営体の姿を多少なりとも明らかにすることができた。この研究の知見は、今後の食料生産の担い手を育成する方策を考える際の手がかりとなる。
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