研究課題/領域番号 |
15K01912
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
藤掛 洋子 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 教授 (70385128)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パラグアイ / シングルマザー / ソナフランカ / 国家戦略 / 福利厚生 |
研究実績の概要 |
2015年度はパラグアイにおいてのべ3回の現地調査を行い、F社他がシングルマザーを採用するに至った経緯を企業幹部や日系社員、雇用されているシングルマザーに対し聞き取り調査を行った。また、現地調査に先立ちF社本社(東京)幹部に対しパラグアイF社の経営方針に関するヒアリングを実施した。現地調査は研究代表藤掛洋子と研究協力者の佐藤鈴木誠吾セルヒオ、小谷博光の3名で実施した。F社本社でのヒアリングは藤掛と佐藤・鈴木が、F社パラグアイでは藤掛と佐藤・鈴木が行った。加えて、佐藤・鈴木がシングルマザーや日系幹部職員への独自を実施した。藤掛・小谷は農村女性へのヒアリングを実施した。 調査結果は以下の通りである。F社本社(東京)幹部によると、パラグアイへの進出を決断した理由はパラグアイにソナフランカ(貿易自由地区)があり、外国の融資を得ることが国家戦略であり、後押しがあったかたである。進出後F社がパラグアイで従業員を募集した際、履歴書をみると応募者の多くがシングルマザーであったことから、当時のF社パラグアイ社長がシングルマザーを積極的に雇用する戦略を打ち出した。この戦略はシングルマザーの課題を抱えるパラグアイ社会に受け入れられた。つまり、シングルマザーの積極的な雇用の回路はF社パラグアイの社長の一存で開いたと見ることもできる。F社は、シングルマザーのための企業研修を行い、F社内に大学を設置するまでにいたっている。経済的に余裕のないシングルマザーは、「一生懸命働いて自分で稼ぎ、子育てをしており責任感が強い」ことから、F社パラグアイは独自の福利厚生制度を設け、勤務成績の良いシングルマザーの子どもへの就学支援も実施している。このことからさらにシングルマザーたちの応募が増加し、F社パラグアイはパラグアイ社会より高い評価を得ていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目の研究であらかにすべき内容の以下6点のうち4点を概ね明らかにすることができた。①F社他がシングルマザーを採用するに至った経緯(企業のBOPやCSR戦略、国家戦略など)、②シングルマザーはどのような回路を経てF社他で職を得たのか、③F社他は、シングルマザーや社会的経済的弱者に対しどのような企業研修や社会福利厚生を行っているのか、④シングルマザーたちはエンパワーメントしているのか、である。なお、④については件数が少ないため、2年目はヒアリング対象を増やす。次に2年目は⑤国家開発戦略の中にジェンダー視点が含まれていたのか、について政府公式文書等から明らかにするとともに社会のジェンダー構造などについてもパラグアイ研究者の研究などをひも解き、研究を深化させる。さらに、⑥労働力の男性化(藤掛 2010)についても統計などから明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
2年目はF社に加え、Y社他への聞き取りを実施するとともに国家政策や統計データを分析することから企業経営者や雇用者たちの語りを複層的に分析する。また、農村女性への調査を継続して実施することから、F社他の取り組みが農村部に居住するシングルマザーにどの程度届いているのか否かを明らかにすることから、F社他のシングルマザー雇用戦略の有効性と課題を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
謝礼等を支払う予定であったが、別枠の予算で対応できたため残額がでた。
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次年度使用額の使用計画 |
謝礼等で使用予定。
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