最終年度は、前年度までの成果を批判的に見直して、関連する新たな研究へつなぐことができた。具体的には、前年度の成果である単著2018.04『もうひとつの占領 セックスというコンタクト・ゾーン』(インパクト出版会)および前々年度の成果共著2018.02第5章「セックスというコンタクト・ゾーン―日本占領の経験から」上野千鶴子/蘭信三/平井和子編『戦争と性暴力の比較史へ向けて』(岩波書店)の単著論文をさらに深化する年度となった。
本研究の目的は、日本と沖縄の占領期にGHQ(連合国軍総司令部)に属するPHW(公衆衛生福祉局)が実施した強制的性病検診に注目し、強制的性病検診は、占領地のさまざまな女性たちへの性暴力であると同時に、「予防」と称し、女性たちの身体を「規律/管理」する占領政策でることを明らかにすることだったが、日本については達成した。沖縄については、本研究を進めていくうちに関連する新たな研究に深い関わりがあることが明らかになったので、引き続き新たな研究の中で進めていく。関連する新たな研究は、2020~2022年度基盤C占領期における米軍外国人妻の婚姻をめぐる比較研究―ハワイを中心に―である。占領期にハワイへ渡った米軍の妻に、沖縄出身女性も含まれている。彼女たちを含めアジア出身およびヨーロッパ出身の妻を新たな研究では、婚姻前現地で米兵と交際している時代にさかのぼって分析する必要がでてきた。そのため、占領初期沖縄の女性たちへ強制的性病検診の考察は、婚姻を考察の視野に入れて引き続き研究を進めることになった。
研究計画についても、政治レベル/個人レベル/メディアレベルの3つの角度から立体的に明らかにできた。
|