研究課題/領域番号 |
15K01917
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 葉子 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (60613982)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 廃娼運動 / 公娼制度 / 検黴 / 帝国 / セクシュアリティ / ジェンダー / 衛生 / 性病 |
研究実績の概要 |
2016年度は、申請書に記した予定よりも早く、本研究課題についての成果を単著にまとめることができた。その拙著『性を管理する帝国―公娼制度下の「衛生」問題と廃娼運動』(大阪大学出版会、2017年1月17日刊行)では、申請書の「研究目的」欄に記したとおり、国際的な廃娼運動団体が、どのように帝国日本の廃娼運動の形成に関与したかを明らかにした。また、西洋の近代公娼制度が日本に導入され、それがさらに日本の占領地である満洲へと導入されていった過程をたどり、日本の廃娼運動がそのような事態にどう対処しようとしたのかを明らかにした。本書に対する専門家からの助言を得ることによって、さらに研究を発展させるため、科研の研究成果報告書に代えて、本書を関係者に送付した。 上記の研究成果の仕上げのため、北海道立文書館、広島県立文書館へ出張し、史料調査を行った。また、今後さらにアジアの公娼制度史、廃娼運動史研究を進展させるため、連携研究者とともに中国(上海、北京)での調査を実施した。 本研究課題に関わる研究会として、2016年度大阪大学文学研究科共同研究費(研究代表者:小橋玲治)の成果報告会との共催の形で、2017年3月4日14時~17時、大阪大学文学研究科中庭会議室にて、公開シンポジウム「近代における女性を中心とした「移動/異動」の力学とその表象」を開催した。そのシンポジウムには、ディスカッサントとして参加し、近代公娼制度や廃娼運動に関わる最新の研究成果を、参加者と共有した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は2年目であるが、すでに研究成果の一部を単著としてまとめることができているので、おおむね順調に進展していると言える。その単著の仕上げに時間をかけたため、申請書提出の時点で予定していたよりも研究会開催の回数が少なかったので、2017年度は、特に研究成果の発表に力を入れたい。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、2016年度にまとめた単著の内容を中心に、研究成果を国内外で発表する。 2017年6月4日に、アメリカ・ニューヨークの Hofstra University で開催される The 17th Berkshire Conference on the History of Women, Genders, and Sexualities で、研究発表を行う予定である。 また、本研究を「社会・国民に発信する方法」の一環として、2017年6月9日に、京都自由大学で開催される一般講座で、本研究課題に関する講演を行う予定である。 2017年7月から8月にかけて、イギリス・ロンドンでの史料調査を実施し、新たな史料を得て、さらに研究を進展させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を単著にまとめる計画が進み、その執筆に費やす時間を増やしたため、2016年度は海外での史料調査にあてる時間を減らすことになった。また、2017年6月にアメリカで学会発表を行うことが決まったため、2016年度分の旅費を減らし、その分をアメリカ出張のために用いることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、主に、2017年6月4日に The 17th Berkshire Conference on the History of Women, Genders, and Sexualities (アメリカ・ニューヨーク)で行う研究発表のための出張の経費に用いる。
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