研究課題
平成30年度は、厚生労働省から得た統計情報の中でも、21世紀成年者縦断調査と中高年者縦断調査の個票の分析を進めることができた。特に21世紀成年者縦断調査では、20代~30代の若年層を対象にして10年間追跡した労働者の雇用形態と10年後の心理的ストレス状況を比較分析した。その主たる結果によると、観察開始時点で20~30代の男性を対象にした分析では、非正規雇用から正規雇用への移行群と非正規雇用を継続した群で心理的ストレスの高さがみられた。この世代は新しい職場で仕事をはじめるなど環境の変化があるが、非正規雇用者でその繰り返しをすることが精神的な健康に影響を及ぼす可能性がある。また、正規雇用への移行群でストレスが高くなっており、長い労働時間や仕事量増加、質の異なる仕事からのストレスが考えられた。同調査の20~30代の女性では、雇用形態の変化で各群に心理的ストレスの差がみられなかった。他方、短時間雇用の非正規雇用継続者で高いストレスが示された。パート労働で育児を担う女性、単身親世帯など、雇用の変化以外の女性特有の特徴がストレスの原因になる可能性がある。以上のような性別による雇用形態の選択と心理的ストレスの状況をコホート研究の結果として分析して、男女特有の雇用と健康状況を把握することと、女性の就労率上昇に関連する要因を分析することができた。女性では就労していたが結婚を機に仕事をやめた者と結婚後も働き続けた者についての要因と健康に関する分析を行い、本研究の目的である女性の就労を後押しする、あるいは妨げる要因についてデータ分析を行うことができた。本研究の成果は、平成30年度の第77回日本公衆衛生学会(福島)、第91回日本産業衛生学会(熊本)で報告しており、国際学術誌での発表も予定している。
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