研究課題/領域番号 |
15K01928
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
細谷 実 関東学院大学, 経済学部, 教授 (10209249)
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研究分担者 |
海妻 径子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (10422065)
千田 有紀 武蔵大学, 社会学部, 教授 (70323730)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 新自由主義 / ネオリベラリズム / 市場化 / 保守主義 / 反共主義 / 伝統主義 / 家父長制 / 性別役割 |
研究実績の概要 |
2016年5月13日に海妻径子より、フランスを中心とするEUのジェンダー研究および男性学の動向について報告をおこない、新自由主義化によるジェンダー再編の状況など本研究計画において参考になる部分について検討をおこなった。また、8月末に予定する韓国での調査旅行の計画、およびインタビュー対象者の選定、収集予定資料の確認などをおこなった。 韓国調査旅行は8月25日から30日にかけておこない、(1)ナ=イ・ユンギョン准教授(延世大学、ジェンダー研究・フェミニズム理論)と面談し、韓国の女性運動・フェミニズム・保守女性出現状況などについて聞き取り調査をおこなった(2)ジョン・ユソン教授(ソガン大学、男性学)と面談し、韓国の社会運動の状況および若年層に対する新自由主義の影響とそれを反映した韓国男性学の動向について、聞き取り調査をおこなった。(3)保守主義団体「ブルー・ユニオン」の女性運動家コン・ユミ氏から、団体設立の経緯や活動内容、女性の役割についての考え方などについて聞き取り調査をおこなった(4)韓国保守系団体「自由経済院」セミナーに参加し、韓国における保守主義と新自由主義の結合状況および歴史修正主義の果たしている機能についてフィールド調査をおこなった。 帰国後、調査旅行報告研究会を10月28日に開催したほか、1月20日および3月29日にも研究会を開催し、研究成果の整理と来年度の研究計画検討をおこなった。 また、英国エセックス大学人権センターフェロー・藤田早苗氏とNPO法人アジア女性資料センタースタッフ・濱田すみれ氏を招聘し、表現の自由への侵害など新保守主義の進展がジェンダー平等にどのような影響を与えるのかを考えるミニシンポジウムを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトの目的である日英韓三国比較のための調査旅行のうち、今年度は韓国への調査を実施し、聞き取り調査およびフィールド調査によって大きな収穫を得ることができた。大統領制下の大胆な政策的介入により女性の社会的登用が急激に進む一方で、社会的地位を得た女性と草の根フェミニズム運動とのあいだに存在する懸隔、新自由主義の進展による格差社会化が「女性=養教育役割/男性=扶養役割」を一層強化する状況、若年層における新自由主義への対抗・オルタナテイブの模索の状況などについて、韓国の研究者等より、当該社会に生きる当事者ならではの視点からの指摘をうけることができた。 とりわけ、保守主義団体の女性運動家に直接話を聞き、民族主義以上に反共主義が保守主義・軍事主義と強く結びついていること、徴兵経験者に就職が有利になるなど軍事主義が資本制と結びつく中で、新自由主義化による女性就業者の増加が軍事主義と女性との新たな結びつきを生み出している点など、貴重な知見を得ることができた。 韓国で収集した資料の翻訳は、現在半分ほど終わっているが、残りについては来年度に持ち越しとなる。作業の進捗状況としてはまずまずであると考えるが、来年度は英国への調査を予定しているため、粛々と残る翻訳作業を進めていきたい。比較可能な資料を英国において収集できるよう、来年度の早期に韓国資料の翻訳作業については完遂し、資料を十分分析の上で練りあげた資料収集計画にもとづき、英国調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、8月末に1週間程度の調査旅行を予定する。調査先としては、研究計画申請当初より予定していたLSE(London School of Economics and Political Science) Gender Instituteの他、平成28年度にフェローの藤田早苗氏と研究交流をおこなったエセックス大学人権センターなども候補に、3~4件の研究者・社会運動家などへの聞き取り調査を実施する。福祉国家から第三の道そしてEU離脱へと向かう英国の、ケアをめぐるジェンダー再編の状況および今後の展望、EU離脱の原動力となったと言われる英国の「怒れる労働者層」において「女性の可視化」やミソジニーの顕在化はどのような状況であるのか、等について、英国社会に生きる当事者としての視点からの指摘を聴取したい。 また韓国との比較上、(新)保守主義的主張を展開している運動団体の女性活動家への調査に意欲的に取り組む。収集資料としては、研究計画申請当初より予定していた雑誌Black paperの閲覧・収集のほか、若者に対する軍隊の入隊宣伝のチラシ等、および入隊宣伝に関する研究論文なども視野に入れ、新自由主義による格差拡大とジェンダー再編が、資本主義と軍事主義の結合にどのような影響をもたらしているのかについての日英韓三カ国比較が、可能となるような資料の収集を試みる。 帰国後は、調査成果を取りまとめるとともに、最終年度として研究全体の総括をおこなう。初年度・第二年度の成果を早期に点検し、収集漏れの資料についても早めの収集をおこなって、論文・書籍刊行等、成果の取りまとめと公開に向けての準備をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
翻訳できていない資料があり、翻訳費が未支出部分あります。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度に、上記翻訳費を支出予定です。
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