| 研究課題/領域番号 |
15K01936
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| 研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
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研究代表者 |
井口 由布 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (80412815)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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| キーワード | ジェンダー / セクシュアリティ / マレーシア / 女性器切除 / 国民 / 医療 / 言説 / 身体 |
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| 研究実績の概要 |
本研究の目的は、マレーシアにおける「女性器切除（Female Genital Mutilation, FGM）」をセクシュアリティと身体の支配に関する現代的な問題としてとらえなおし、マレーシアにおける国民的な主体形成の中に位置づけることである。
平成29年度は、平成28年度のマレーシアでの長期滞在による調査の成果を整理し分析をし、フォローアップの調査と口頭発表、論文執筆作業を行った。平成28年度の調査は、A)「助産婦」からの聞き取り、B)村落の女性たち600名への量的調査、C)フォーカス・グループ・ディスカッションの三つである。このうちA)とC)の分析を代表者が担当し、B)の分析を現地における研究協力者であるペナン ・メディカル・カレッジのラシド教授が担当した。整理と分析の過程で、8月24日から9月16日までマレーシアにおいて、ラシド教授との打ち合わせをおこなうと同時に、ケダ州の調査地に滞在してフォローアップの調査をおこなった。A)については、平成28年度に口頭発表をした原稿をもとに投稿論文の執筆を開始した。C）については、11月の国際会議において研究代表者が主催したパネルで口頭報告を行った。この口頭報告は、マレーシアにおける「FGM」の現状把握をすると同時に、これを理論的な観点から接合しようとするものであった。さらに、このパネルではアフリカの「FGM」を研究する人類学者である宮地歌織氏や宮脇幸生氏を招き、女性の身体にまつわる政治という観点から「FGM」の問題をあつかった。B)については、ラシド教授、王立アイルランド外科学院のコンロイ教授とともに共著論文を執筆した。8月と9月のマレーシア滞在中において、ラシド教授とこの論文についての情報共有と検討をおこない、コンロイ教授とも連絡をとりながら遠隔による執筆作業をすすめ、学術誌への投稿を行った。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題には二つの柱がある。一つ目である現状把握については、平成29年度も1)資料収集と2)現地聞き取り調査の二つの方向で行った。1)の資料収集については、平成27年度と平成28年度においてかなり網羅した。平成29年度はこれに最新のものを加えた。2)の現地での聞き取り調査に関しては、平成28年度の長期滞在に加えて平成29年度も村落に滞在しながらのフォローアップ調査をおこなった。現地調査に関する成果については、平成28年度から随時国際学会での報告を行い、平成29年度は、フォーカス・グループ・ディスカッションの調査結果について口頭報告をした。平成28年度に代表者が報告を行った助産婦への聞き取りの結果については投稿論文を作成中であり、平成28年度に行った村落の女性たち600名への量的調査の結果については学術誌へ投稿した。
二つ目の柱である理論的な作業については、学会や研究会において、ナショナリズム、言説の政治、ジェンダーと セクシュアリティ、身体、医療、生権力などの理論的問題を討議した。また、これらの観点から「FGM」について発表と論文の執筆を行った。平成28年度に同志社大学でおこなった発表（「女性器切除と言説の政治」）についてはすでに草稿が完成しており、投稿先を検討しているところである。平成29年11月の国際学会における発表では、アフリカにおける「Female Genital Cutting」の問題を調査している宮地氏や宮脇氏ともパネルを行い、マレーシアの「FGM」問題を女性の身体とセクシュアリティをめぐる世界的な問題に位置づけることができた。
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| 今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、本研究課題の最終年度である。1)現地調査の継続、2)成果のとりまとめと発表、3)理論的作業、4)分野をこえた研究者ネットワークの構築、5)マレーシア以外のアジア地域（とりわけインドネシア）における「FGM」問題の動向の調査を行う。 1)に関しては、平成28年度と平成29年度に行なった調査地を訪問し、フォローアップ的に調査を継続する。2)平成28年度と平成29年度における長期調査のまとめを引き続き行い、すでに口頭発表した課題については論文を完成させ、投稿を行う。助産婦へのインタビューとフォーカス・グループ・ディスカッションについての論文では、現地方言の確認作業を現地の研究協力者とともに詳細に行う。また、すでに投稿した論文に対する修正などにそなえる。3)理論的な作業については、これまでに引き続き、ナショナリズム論、ポストコロニアル論、言説や表象に関する議論、ジェンダ ー、セクシュアリティ、身体に関する議論などを広くとりいれて、マレーシアにおける「FGM」の問題を理論的にとらえる作業を行う。4)については、ラシド教授やコンロイ教授など医学や衛生学分野の研究者、アフリカで「FGM」問題を行なっている人類学者ともネットワーク保持を図りたい。８月にマレーシアで開催される国際マレーシア学会にも出席し、マレーシア研究の最新動向もつかみ、本研究のまとめにつなげる。5)については、文献等の収集から開始し、アフリカ中心の「FGM」論の相対化をめざす、次の段階の研究プロジェクトへとつなげたい。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度においてはおおむね計画通りに研究が進んだ。当初の計画では、現地研究協力者であるラシド教授を国際学会でのパネル報告のために招聘する予定であったが、勤務校との調整上実現しなかったため招聘に予定していた予算が残ってしまった。
平成30年度は成果のとりまとめと成果発表を重点的に行う。論文執筆にかかわる英文やマレー語の校閲作業代、成果発表のための国際学会参加の費用の一部にあてる。また、アフリカ中心の「FGM」論を相対化するという観点からマレーシア以外での「FGM」の現状に関する研究の端緒として、インドネシアにおける「FGM」の現状把握をするための文献調査をする予定である。インドネシア調査の渡航費用の一部としても使用する。
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