研究課題/領域番号 |
15K01938
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研究機関 | 島根県立大学短期大学部 |
研究代表者 |
渡部 周子 島根県立大学短期大学部, 総合文化学科, 講師 (70422582)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジェンダー / 近代 / 日本 / 少女 / かわいい |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に引き続き、近代日本の「「かわいい」の生成」について、少女文化を事例として調査研究を進めた。少女雑誌、教育、児童文学、美術等を対象とし、「かわいい」がどのように表現されているのか考察した。文献資料や図像資料の調査や情報収集、整理、解釈という方法によっている。ただし、アクチュアルな意義を問うために、コンテンポラリーの動向との比較、相対化も適宜はかっている。研究実績を以下で説明する。 口頭報告「「少女」表象について考える――傷病、死、弱さ、可愛さ、美しさ」(「大正・乙女デザイン研究所」第51回月例会、2016年8月20日、於中央区立産業会館)で、美術や文学領域の有識者から、専門的な指摘を得ることができ、これにより資料や情報の解釈を進めることができた。さらに、「かわいい」とはなにかを複合的に捉えることにつながることから、論文「黒田清輝の《木かげ》の「少女」――「農民」表象から見る視覚の近代化」(『島根県立大学短期大学部松江キャンパス研究紀要』55、2016年)で、近代日本の「少女」表象の形成を分析した。 また、単著『つくられた「少女」――「懲罰」としての病と死』(日本評論社、2017年)を出版した。当該著書は、科学研究費 若手研究B(23710315)「明治期女子教育の制度化に際する西洋科学思想の影響に関する研究」(2011‐2014年)による成果を主にとりまとめたものである。したがって、中心となる考察対象は、女子教育界における医科学の影響となっている。ただし、終章にあたる「おわりに――「少女」について考えるということ」で、「かわいい」ということはどういうことか、「少女」という存在との相関性、類似性から分析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度、入手した資料を解釈し整理する時間を、当初予定より多く確保するという変更を加えたことにより、本年度の研究計画に影響が及んでいる。この変更が、成果を出す上で、必要だとする判断によっている。しかし、研究全体の進行から見れば、やや遅れがでている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に実施した、調査方法を引き続きすすめていくものであり、資料や情報の調査、収集、整理、分類、解釈を行う。「「かわいい」の生成」を考えるに際して、「少女」文化を、人文社会科学(またこれに影響を与えた自然科学)や芸術の動向と、総合的に捉えることを試みる。 また、現代の「かわいい」文化や「少女」文化等の、コンテンポラリーの動向にも目を向けることで、比較、相対化を適宜はかり、アクチュアルな意義を浮かび上がらせる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究1年目に、集まった資料を、整理し、分析する時間を、当初予定よりも多くとることが、有益だとわかった。問題設定や解釈の妥当性、計画の方向性を確認し、着実に研究を進めるためにである。平成28年度に行う予定であった口頭報告を、平成27年度に行ってもいる。資料や情報の調査、ならびに収集にあてる時間と支出は少なくなり、平成28年度分としての次年度使用額が生じた。平成28年度には、所属の大学の旅費規定に変更がなされた。また、研究を進める過程で、必要だと判断したための変更であるが、収集した資料を整理、解釈することと、調査を並行して進めるという方法を昨年同様に取った結果、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
資料や情報の調査と入手に際する費用、また電子機器の購入費用等を予定している。また、3年で計画していたが、1年の延長を見込んでいる。
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