平成29年度は、平成28年度の調査を継続しつつ、オーストリアにおけるハプスブルク家ゆかりの代表的な都市であるウィーン、インスブルック、さらにクレムスミュンスターやメルクを具体的に据えながら、観光政策を通じて浮かび上がるハプスブルク・イメージの変遷、ならびにそのようなイメージに基づいて作られる各都市のイメージが「観光立国オーストリア」にいかなる形で反映されていったのか、という問題についてのさらなる分析、および包括的な結論の構築をおこなった。 特に、平成28年度のトピックの1つであった「オーストリア共和国の「対ハプスブルク政策」と観光事業の分野における「ハプスブルク・イメージ」の位置づけの変遷」について、第二次世界大戦後から現在に至るまでの詳細な分析と検討を加えつつ、「我が国における「ハプスブルク・イメージ」をめぐるオーストリアの観光政策の実情」について、特に1980年代以降の時代に着目しつつ、オーストリアが国内外に対して観光立国としての姿を示してゆくにあたって「ハプスブルク・イメージ」が持った意味を明らかにした。特にそこにおいて重要となったのが、我が国における「ウィーン世紀末」ブームと、それに伴うハプスブルク家統治末期のウィーンに寄せる積極的な評価であることが判明した。 上述の研究のために収集した文献・資料については、平成29年度に購入をおこなった大型スキャナーやモバイルプロジェクタを中心に用いつつ、紙媒体の資料の電子処理と、電子化された情報をプレゼンテーションできる環境整備をおこない、成果発表や意見交換を円滑におこなうことができた。
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