研究課題/領域番号 |
15K01944
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
大澤 健 和歌山大学, 経済学部, 教授 (40261482)
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研究分担者 |
米田 誠司 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (30636147)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 観光まちづくり / イノベーション / 知識循環(知識創造) / クラスター |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究は、①由布院温泉において多発的なイノベーションが生じていること、②そのイノベーションの背後には動態的な知識循環クラスターがあること、を立証すること中心に進められた。①について、由布院らしさを体現するものとして、景観と調和した(小さな)宿泊施設、地元の食材を活用した食(農業と料理)、文化の雰囲気を演出するためのアートイベントやアート関連施設、環境や景観に配慮した取り組み、をリストアップした。今年度は主として前者3項目について調査を行っている。 ①については、宿泊施設の新規開業数の推移を調査した。この調査では、開業年のほかに、旅館の主要な施設構造、開業の経過等についての質問も行った。旅館組合加盟の全旅館に郵送でアンケートを行い、未回収分については追ってヒアリング調査を行った。また、旅館の料理部門の交流過程についてヒアリング調査を行った。さらには、アートイベントの経年的な開催状況について文献調査およびヒアリング調査を実施した。このほかに、域内の観光協会および旅館組合が発行している各種の資料(総会資料および観光新聞)、および湯布院町商工会の資料を収集した。また、由布院温泉のまちづくりに関する基本的な文献と、知識創造プロセスに関する文献の収集を行った。 これらの調査と並行して、②の知識循環プロセスの存在を明確化する作業を行っている。宿泊施設の調査については、開業の経過を調べることによって、旅館の新規開業にたいして地域内での知識瞬間がどの程度影響しているのかを調査した。また、料理分野でのイノベーションを調べるとともに、料理人相互の交流と知識循環の様子についてもヒアリングしている。アートについても同様である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
由布院「らしさ」=地域特性の具体的な内容を確定し、それを基盤にしたイノベーションの発生状況もある程度調査を行うことができている。宿泊施設については、開業年、施設構造など定量的な調査によってイノベーションの経過を明確化できると考えられる。その背後にある知識循環クラスターの存在については、さらに詳細に調査する必要がある。宿泊施設については詳細なアンケート調査を実施したが、旅館組合非加盟の宿泊施設への調査は28年度に繰り越された。これらがそろい次第、イノベーションの発生状況について定量的な分析を行える段階にある。アートと食については、どのようにして定量的にイノベーションの発生を示すのかが大きな課題になっている。 イノベーションの背後にある知識循環プロセスについては、文献資料による調査を今後もさらに継続しなければならない。また、ヒアリングについてももっと手広く行う必要がある。これらは28年度に引き続き行われる。
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今後の研究の推進方策 |
「由布院モデル」の構築については予定よりも早く行えるので、これを実証的に示す根拠の精緻化が28年度の大きな課題である。 イノベーションの発生分野の確定は終わっているが、イノベーションの発生状況を定量的に示すための工夫が必要とされている。それによって、多発的なイノベーションが発生していることを説得的に示すことができると考えられる。 また、その背後にある知識循環プロセスについても、由布院に関する多くの文献をより精緻に整理しなおすことによって解明するとともに、ヒアリング等による裏付けを強化していくことが求められる。
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