研究課題/領域番号 |
15K01945
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
堀田 祐三子 和歌山大学, 観光学部, 教授 (40346250)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 住む / 宿泊 / 民泊 / 観光公害 / 生活文化 / 生活遺産 |
研究実績の概要 |
今年度の課題は、生活者の観光経験と空間形成への意識・実践の関係を分析する点にあることを前提として以下の調査を行った。 既存資料を用い京都市における生活者の観光に対する意識の考察を行った。併せて前年度の調査結果をもとに、急増する簡易宿所の立地、開業年等について整理し、マクロレベルでの空間変化を概観した。2000年以降(17年8月末まで)に許可をうけた施設は合計1732件、地理的分布は下京区387件、東山区378件、中京区274件、上京区192件、南区189件であった。下京区では町家が127件であり、総定員数5名以下の施設が区内施設全体の4割超と小規模であった。 簡易宿所以外にも多数の「違法民泊」が確認できた。京都市は生活と観光施設が近接しており、民泊が生活空間を侵害している状況が明らかとなった。住宅を利用した宿泊サービスの提供が広がったことにより、住むという行為と宿泊するという行為の境界が曖昧になり、そのことによって空間の認識のされ方や管理、取扱い方に混乱が生じている。 また広島県廿日市市宮島において、観光客の増加と観光空間の変化、住民の意識および生活の変化についてヒアリング調査を行った。宮島では多くの観光客をひきつけている一方、立地や高齢化、人口減少により、職住分離が進み、生活文化の継承が危惧されている。世界遺産という強力な磁石に引き寄せられた観光客と観光関連産業が地域経済を支える核であると同時に、それが障害にもテコにもなりながら磁石周辺の生活文化・空間(生活遺産)を再生・継承する動きと結びついていることが確認できた。 歴史的に多くの観光客が訪れる観光地では、インフラが来訪者収容の許容力を越えてきており、ふたたび「観光公害」と呼ばれる状況が生じている。こうしたネガティブインパクトが生活者の空間形成に対する意識や実践にどのような影響を与えるかについても分析・検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果の一部がとりまとめの段階にまで達したが、他方で本来終えていなければならない課題がいまだ残されているため上記のとおり判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果のとりまとめと発表にむけた作業を行う。 補足的に観光客が増大している都市の空間形成および市民意識について調査を行い、不足部分を補完し、論文化する。 その上で、この成果をもとにさらに研究課題を発展させる方向を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表を国際学会で行うことを想定していたが、論文投稿に変更したことや、残された研究課題があり、それが今年度達成できていないため。 次年度に残された課題に取り組む際の作業補助や、予定している学会発表のための旅費として残額を利用する計画である。
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