研究実績の概要 |
観光学に関する諸文献から,ツーリズムに関する理論的整理を行った。ツーリズムの本質は「まなざし」の違いにあると述べたUrryに対し,Wearinigは,現代は「見るだけ」に留まらず,種々のことが多元的になされる「体験型」にシフトしていると述べている。いまや余暇は人格形成の本拠であり,観光地の美的価値よりも,ツーリストの積極的な行動によって生まれる心の充実感が重視されている。またTelferは,近年の発展方向として「新しい意識的ツーリズム」を挙げている。それは,地域主導性,環境の持続的保持,持続発展可能なツーリズムを3原則としているが,地域協働体の成立可能性やビジネスとの両立等について批判もある。 次に,主に「綾の照葉樹林プロジェクト」について関係者へのヒアリングおよび文献調査を行った。プロジェクト発足から10年が経過し,事務局である「てるはの森の会」を中心に交流事業が展開されている。近年の特徴は,調査活動にも市民参加を積極的に取り入れていること,環境のみならず歴史文化にも着目した調査を行っていること,地域住民を対象としたツアー,事業報告,人材育成などの幅広いプログラムを展開していることである。個々の取り組みに関する調査は今後の課題である。 Telfer, D. J. The Evolution of Tourism and Development Theory, in : Sharpley / Telfer (eds.), op.cit., 2002, pp.35-78. Urry, J., The Tourist Gaze, 2nd ed. London : Sage. 2002 Wearing, S. etc. Tourist Cultures : Identity, Place and the Traveller, Los Angels : Sage, 2010.
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