本研究「移住政策、滞在型観光との接合による地域経営」は、都市から地域への移住政策や滞在型観光との接合により、新たな地域経営の可能性を見出すものである。平成30年度は以下の研究を行った。 前年度までの研究実績を踏まえて、移住者へのヒアリングを徳島県神山町、大分県竹田市、臼杵市等で継続して行った。その結果、地域おける関係性構築において、従来想定されている以上に移住者が地域に急速に定着し、これまで地域になかった業種、業態を立ち上げることによって地域で重要な役割を担うケースが多いことが明らかになった。一方でこれまでの研究で、当初想定していたアメニティ・マイグレーションは現象が乏しくなり、代わりに人々がライフスタイルによって移住先を選定するというライフスタイル・マイグレーションが大きく進展していた。そこで現地調査では、ライフスタイル・マイグレーション及び地震からの復興状況も調査するため、大分県由布市と、ニュージーランドクライストチャーチ、アカロアにおいて現地調査を行った。 またモデル化のために、移住者の地域経営への参画等に関するアンケート調査と、滞在型観光に関する意識調査の2件を行った。その結果前者では、観光が移住の決め手になったケースが4割弱あり、移住後徐々に関係性が構築されている様子を見ることができた。また後者では、滞在型観光の需要は高かったものの、宿泊費、交通費の高さや休暇の取りにくさが阻害要因として指摘されていた。 これまでの研究成果により、移住に関してはオリフィス型のモデルを見出すことができたが、その検証は今後の課題である。また日帰型観光から定住に至るプロセスにおいては、滞在型観光の需要は高いものの促進しない現状から、プロセスにおいてはここで関係性が弱いことが明らかとなった。また滞在型観光としてのインバウンドの可能性を見出すシンポジウムも開催した。
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