研究課題/領域番号 |
15K01958
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研究機関 | 奈良県立大学 |
研究代表者 |
中谷 哲弥 奈良県立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50285384)
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研究分担者 |
外川 昌彦 広島大学, その他の研究科, 准教授 (70325207)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 観光 / コミュニティ・ベースド・ツーリズム / 農村観光 |
研究実績の概要 |
南アジア地域における持続可能な観光開発の一形態としてのコミュニティ・ベースド・ツーリズム(Community-based Tourism、以下CBT)に関して、以下の通りの研究を実施した。代表者である中谷は、9月にバングラデシュのタンガイル県においてCBTを推進する団体アジエールの農村センターのプログラム、及びジャバツアーという現地ツアーオペレーターがムンシゴンジ県において催行する農村ホームステイ・プログラムに実際に参加し、運営関係者や日本からの参加者へのインタビュー調査等を実施した。また、その成果を11月に中国・上海師範大学における日中合同のセミナー及び12月に東京で開催された国際ベンガル学会において発表した。 研究分担者の外川も同様に、9月にタンガイル県のアジエールの農村センターを訪問し、同センターが取り組むバングラデシュの村落社会に根ざした観光研修ツアーの現状を調査し、同時期にセンターを訪れていた日本人の学生研修者へのインタビューなどを行った。また、ユネスコの世界遺産に指定され、バングラデシュを代表する観光地となっているパハルプル仏教僧院遺蹟を訪れ、特に、地元のNGO団体の支援を受けて近隣の農民が取り組んでいる、観光客を民家に受け入れて農村生活を体験させる新たな試みを調査した。本課題に関する比較検討のために、6月には中国チベット自治区の青海民族大学を訪問して、資料収集、現地視察なども行った。さらに、12月末には、インドの西ベンガル州の国立タゴール国際大学を訪れ、タゴールの日本人との交流を記念して設立された日本学院などを訪れ、歴史的な記念物を通した観光開発の可能性についても資料を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は、研究代表者と研究分担者の双方がバングラデシュにおけるCBTの実践例について調査を実施することができた。しかし、研究代表者の中谷は2015年度3月にもバングラデシュにおける調査を計画していたものの、現地において日本人が犠牲となったテロの発生により日本の外務省が発出する「危険情報」の危険レベルが上昇したために、調査の中止を余儀なくされた。 研究分担者の外川は、バングラデシュでの調査に加えて、インドに関しても、特に近代の日印交流史でも最も日本人の関心を集めてきた仏教の聖地であるブッダガヤと日本人との関わりを新たな課題として設定し、そのCBTの可能性を含めて、聖地の観光化という観点からの検証を進めてきた。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度に関してもバングラデシュとインドを対象として調査を進める。研究代表者の中谷は、バングラデシュに関しては現地の治安情勢をみながら、特にタンガイル県におけるCBTの取組について、可能な限り継続的な調査を実施する。また、インドに関しても政府観光省が催行するCBTの実例に関して、政策、行政、NGO、ツアーオペレーター、地域住民などの関係者がどのように実施体制を組んでいるのかについて現地調査を実施する。 研究分担者の外川は、特に明治期の日本人のインド渡航の最も大きな動機付けとなっていた、仏教の聖地としてのブッダガヤと日本人との関わりに焦点を置きながら、そのCBTの可能性も含めて、研究を進める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の中谷は2015年度3月にもバングラデシュにおける調査を計画していたものの、現地において日本人が犠牲となったテロ事件が発生した。これにより日本の外務省が発出する「危険情報」の危険レベルが上昇したために、調査を中止せざるを得なくなり、想定していた旅費が未執行となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度ではインド、そして治安状況を見ながら可能な限りバングラデシュへも現地調査を行い、2015年度残余分の執行を行う。もしバングラデシュへの渡航ができない場合には、現地のCBTを実践する団体の代表を日本に招き、セミナーを開催することも検討している。
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