研究課題/領域番号 |
15K01958
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研究機関 | 奈良県立大学 |
研究代表者 |
中谷 哲弥 奈良県立大学, 地域創造学部, 教授 (50285384)
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研究分担者 |
外川 昌彦 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (70325207)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 観光 / コミュニティ・ベースド・ツーリズム / 持続可能な観光開発 / インド / バングラデシュ |
研究実績の概要 |
南アジア地域における持続可能な観光開発の一形態としてのコミュニティ・ベースド・ツーリズム(Community-based Tourism、以下CBT)に関して、以下の通りの研究を実施した。代表者である中谷は、8月にインドのフーグリー県のカマルプクル及びビールブーム県のシャンティニトン近郊のいくつかの農村における実践を調査した。いずれもインド政府が進めてきた「農村観光(Explore Rural India)」プログラムのモデル村となっている地域である。前者はヒンドゥー教聖者の生誕地を管理する宗教団体、後者は政府登録の指定部族を支援するNGOが同プログラムと深く関わっていることから、現地訪問による現況確認とともに、両者へのインタビュー調査を実施した。 バングラデシュに関しては、外務省が発出する「危険情報」の危険レベルが引き上げられたままとなっていたために現地調査は実施しなかった。しかし、これを補完するためにバングラデシュのタンガイル県においてCBTを推進する団体アジエールの役員、さらにはインドネシアにおいてCBTを実践する実務家2名もあわせて招聘し、途上国における国際比較の観点からCBTの現状と課題について、代表者の所属先である奈良県立大学において国際セミナーを開催した。 研究分担者の外川は、バングラデシュへの渡航が困難な状況を踏まえて、本年度は、インド、バングラデシュとの対比からスリランカでの調査を行い、内戦終結後の聖地の状況や新たなツーリズム産業の現状について視察を行った。具体的には、コロンボの旧市街の旧跡、世界文化遺産に指定されているキャンディ王国の王宮跡、ニゴンボなどの海浜地帯の新たなツーリズム・スポットの形成などを調査した。また、合わせて19世紀の仏教復興運動家として知られるアナガーリカ・ダルマパーラの史料を、スリランカ大菩提協会に付設された文書館で閲覧した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の中谷に関しては、2015年度に実施したバングラデシュでの現地調査に加えて、2016年度にはインドでの現地調査を実施することで、隣接する両国間に関する情報を獲得することができた。これにより、両国の事例を比較検討するという当初計画を推進できている。また、日本国内においてバングラデシュとインドネシアのCBTに関する国際セミナーを開催したことで、より広範な視点から南アジアのCBTに関する分析検討を行うことができた。 研究分担者の外川は、インドのブッダガヤに関する資料収集と成果の取りまとめを進め、その一部は、2017年3月17日に、デリー大学が開催した国際シンポジウムに参加して、The Bodh-Gaya Restoration Movement by Anagarika Dharmapala and the Japanese と題する報告を行った。近代の日印交流史でも最も日本人の関心を集めてきた仏教の聖地であるブッダガヤと日本人との関わりを新たな課題として設定し、そのCBTの可能性を含めて、聖地の観光化という観点からの検証を進めてきた。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度に関しても、基本的にバングラデシュとインドを対象として調査を進める。研究代表者の中谷は、インドに関しては引き続きビールブーム県のシャンティニトン近郊農村におけるCBTの取組を調査するとともに、インドの他所における先進事例に関しても訪問調査を実施する予定である。バングラデシュに関しては現地の治安情勢をみながら、特にタンガイル県におけるCBTの取組について、可能な限り継続的な調査を実施する。 研究分担者の外川は、引き続きブッダガヤの聖地としての復興と戦後の観光化の経緯に関して、CBTの可能性も含めて調査・検証する予定である。昨年度は、調整がつかずに訪問ができなかったブッダガヤへの調査を予定し、また関係する資料の収集を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
バングラデシュにおいて、2015年10月及び2016年7月に邦人が犠牲となるテロ事件が発生したことにより、日本の外務省が発出する「危険情報」の危険レベルが引き上げられたため、2015年度末及び2016年度中の同国への訪問が困難となり、想定していた旅費が未執行となったことが大きな理由である。現地訪問の代替として、科研費により同国よりCBTの実践者を招聘して国際セミナーを開催したが、それでも未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度ではインド、そして治安状況を見ながら可能な限りバングラデシュへも現地調査を行い、未使用分の執行を行う予定である。
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