本研究では、タイの農山漁村において、地元NGOと協働で行われているコミュニティ・べースド・ツーリズム(CBT)の諸相について人類学的視点から明らかにした。具体的には、北部の山地民カレンの集落において、および南部離島の漁村コミュニティにおいてそれぞれ民族誌的調査を実施し、CBTに関わる人々がCBTを単に経済活動として捉えるのではなく、自文化を外部に向かって発信する手段や、コミュニティ意識を高める媒体として捉えているなど、CBTの多義的な意味を明らかにすることができた。さらに本研究では、こうした観光実践を「半市場経済」と位置づけ、その社会的意義や可能性についても考察を行なった。
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