日本のホテル産業は平成不況以来、低迷と回復を繰り返している。ホテル産業が競争力のある産業となるためには、十分な投資が継続的かつ安定的に行われることが重要である。そのためには、投資家がホテル資産への投資からリスクを見合うリターンが得られると認識できることが前提となる。従って、上記のような投資循環サイクルを構築することが重要であり、投資循環を可能とするHAMの普及及び発展は必須不可欠ともいえる。HAMに関する研究は米国で1980年代から始まり、実務分野と深くかかわりながら発展してきた。一方、日本におけるHAMは2000年代に入ってから注目され、その歴史が浅く、研究実績も少ない状況である。特に、HAMの中で重要な役割を果たしているホテルアセットマネジャーには「ホテル経営」、「不動産」、「ファイナンス」の3要素の知識および経験を体系的に取得することが要求され、彼らを養成する教育・研修機会を充実させることは喫緊の課題である。 本研究は、最近注目されつつあるHAMの現況を踏まえ、HAMにおける重要な役割を果たしているホテルアセットマネジャーの育成について考察するとともに、大学におけるHAM人材教育の方向性を検討することを試みる。具体的には、アメリカにおいて、ホスピタリティ教育の長い歴史を持っているミシガン州立大学及びコーネル大学を事例としてカリキュラムを分析し、大学におけるHAM人材教育の方向性を検討することを目的とした。 研究の成果として、下記の3点が挙げられる。第1に、必須科目として卒業まで800時間程度のインターンシップの実施することである。第2に、インターンシップ先や卒業後の進路先の確保のため、在学生と卒業生間の関係づくりを積極的に支援することである。最後に、実学として理論教育と実務教育の両方をバランスよく行っていることである。
|