平成29年度は研究計画に基づき、1.国内の事例調査、2.国外の事例調査、3.観光地のブランド構築のための戦略の検討を実施した。 国内事例としては近年急激に観光客数を伸ばしている長野県阿智村ならびに長野県内の主に重伝建を有する地域の調査を実施した。集客が持続している観光地においては、観光資源の活用を時々に応じて変化させており、常に新しい魅力の提供が行われていることが分かった。また、国外事例調査についてはイタリア・チンクエテッレ(世界遺産)とモナコを対象地としているが、自然・文化資源ともに柔軟な提供方法が実施されているが、一方で国内事例とは逆に不変的な活動が実施されていることが確認され、その点ではマーケットの差異が見いだされた。 3.については3カ年の調査の集大成として、地域ブランディングの構築のステップについて既往研究を踏まえて整理を行うとともに、国内各地で行われている取り組みと既存の調査のデータに基づきブランド構築の可否を対照させ、日本国内においては観光地のブランディングをいかに実施していくべきかについて考察を行った。成果として、①観光地としての地域ブランディングとは、地名などの「ブランド要素」が対象地の細かな要素を包含して受け手から「良い」とイメージするに至る認知と評価の過程であり、②ブランドの構築とは、観光地が「突出したとある具体的イメージ」で認識されるのではなく、総合的・抽象的に認知されるに至っている考えられること、③その結果、観光地での活動は多様化し滞在時間の延長が望めるとともに、観光地の新陳代謝が図られ、その結果に持続性につながること、が明らかとなった。
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