研究課題/領域番号 |
15K01969
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
周藤 真也 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (60323242)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 産業遺産 / 旧鉱山 / 遺産化 / 観光資源 / 地域活動 / 博物館 |
研究実績の概要 |
研究初年度であり、本研究の基礎の形成にあてた。これまで収集してきた鉱山遺構・遺物の産業遺産化や鉱山の歴史や記憶をめぐる地域活動の取り組みについて、情報と資料を整理しとりまとめるとともに、ヨーロッパなどの海外の事例の視察を精力的に行った。 ヨーロッパにおける事例としては、具体的には9月にスウェーデンのベルクスラーゲン・エコミュージアムおよびダーラナ県の旧鉱山地域の視察を行った。同エコミュージアムは、ダーラナ県、ヴエストマンランド県にまたがる世界最大のエコミュージアムであるが、19世紀まで栄えた鉄鉱石の鉱山と製鉄所に関連した60を超えるサイトが点在している。ダーラナ県にはそれら以外にも銀銅山に関わる遺構や博物館が存在する。今回の視察では、ベルクスラーゲン・エコミュージアムの未訪のサイト約10ヶ所と、サラ銀山博物館や世界遺産「ファールンの大鉱山地域」に含まれる未訪のサイトなど、必ずしも有名とは言えないサイトを調査することを通して、遺産化の現状と来訪者の状況、地域での活動の内容を確認することができた。 また、東南アジアにおける比較事例として、3月にはマレーシアおよびタイにおける錫鉱山跡の現状と鉱山の記憶の観光資源としての活用例の視察を行った。この地域は、かつて19世紀に銅や錫鉱山として栄えたイギリスのコーンウォール地域の鉱山技術者が、世界中へと分れていった先の一つであるが、現場の鉱山運営は華僑の経営者と労働者によって担われた歴史を実地で確認した。具体的には、マレーシアのイポーやスンガイレンビン、タイのプーケットにおける事例について、鉱山の記憶と遺構の取り扱われ方について、現状と歴史の確認と資料収集を行った。 国内においては従来からフィールドワークを行ってきた、栃木県の旧足尾銅山地域における鉱山町の記憶をテーマとした調査を行うとともに、調査に必要となった写真資料の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は、現在までのところおおむね順調に進展しているが、むしろ計画よりも順調に進展している部分がある。 本年度は、当初の研究実施計画において現地調査先として検討していた、ヨーロッパのいくつかの地域の事例に替えて、東南アジアにおける事例の調査を行った。これは、これまでの研究で、ある程度事情の分かっているヨーロッパの事例を検討するよりも、より世界的な規模での比較研究を先に進めることを優先した結果である。これにより、ヨーロッパのいくつかの個別の事例の詳細な検討は遅れることになったが、研究全体としては比較研究に向けた準備がより進む結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で、世界的な規模での比較研究を当初の予定よりも早期に進めていく準備ができつつあり、今後もこの方向で進めていく。そのため、次年度以降、予定していた現地調査を可能な範囲で多少前倒しで実施するとともに、より本格的な比較研究のために適切な事例を調査対象地として加えることを検討する。ただし、調査研究を早期に進める結果、研究取りまとめに関しては、より時間を有することが予想されるため、研究実施計画の後半の年度では、研究の取りまとめと研究成果の発表に十分な研究資源が投入できるよう配慮する。
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