本研究は期間を3年とし、民俗芸能の観光化について、グローバル化、同時に進行する再ローカル化の動きに着目して、それらの展開と特質、地域振興とアイデンティティの関わり、ネットワーク形成について現地調査を行ない、解明することを目的としている。具体的には、沖縄において旧盆に行なわれる民俗芸能「エイサー」を取り上げる。 三年目の重点課題は、エイサーを活用した地域振興や観光の在り方ついて、県内だけでなく県外・海外とのネットワーク形成についてである。具体的には、沖縄市、うるま市、嘉手納町等にて、主に森田が行政機関、商業関係者等のエイサーによる地域振興や観光活用について、城田は新しいエイサー団体とネットワークについて、エイサー保存会、エイサー団体、市役所、ホテル等にてインタビューを行なった。そして沖縄からの多くの移民が暮らすハワイ(アメリカ合衆国)にて、「ハワイ・オキナワン・フェスティバル」、エイサー団体の活動等のフィールドワークを共同で行なった。あわせて、関連資料の収集、文献を使用した研究を進めた。 三年間の調査研究において、エイサーが戦後沖縄の社会変化と連動していること、各種イベント等での演舞が地域の活性化につながっていること、観光への寄与、地域アイデンティティを共有する経緯となっていること、創作エイサー団体によるグローバルな展開とネットワーク形成が認められることがわかった。そして、地域を超えて広がりながらも地域社会と結び付こうとする民俗芸能の諸相、それらを活用した持続可能な観光の可能性についてが明らかになった。現在、近代以降の沖縄の観光史を検証し、エイサー等の民俗芸能を含む文化観光の展開について論考を準備中である。 科学研究費補助金基盤研究(C)「民俗芸能のグローカル化と実践的観光活用に関する研究」(平成30年度~平成32年度)を、本研究からの継続的共同研究として予定している。
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