研究課題/領域番号 |
15K01977
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
篠澤 和久 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (20211956)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 論理的思考 / ICT活用型授業 / クリティカルシンキング / アクティブラーニング |
研究実績の概要 |
本研究では、文科省の教育基本方針の一つであるICT活用による情報活用型授業を視野に入れて、主として初等中等教育の現場の状況に即応するかたちで、「ICT活用による対話型論理的思考」に関する理論と実践の構築を試みてきた。2017年度の研究実績としては、以下の3点を挙げることができる。 (1)一つは、2016年度から継続した成果の蓄積である。仙台市内の初等中等教育の現場では、いわゆる特定モデル校を別にすれば、ICT活用のための環境整備は著しく立ち後れている。この現状を鑑みて本研究では、所属機関の協力も得ながら、ICT機器(タブレット型PCや実物投影機)を研究協力校に導入したうえで、現場の教員との研究会・勉強会を実施して、生徒の学習意欲と学習効果を高めるための手法を検討してきた。そのさい基本としてきたのは、機器の導入によって過度の負荷と混乱が生じることを避けるために、通常の教科指導の枠組みから大きく逸脱しない、という方針であった。その成果については、「タブレット端末活用事例集」(仙台市教育委員会編)としてすでに公開されている。 (2)さらに、研究協力校との取り組みは、他大学教員との連携のもとで、二つの全国大会(第21回視聴覚教育総合全国大会および第68回放送教育研究会全国大会[ともに2017年10月に仙台市で開催])の研究授業としても公開され、高い評価を受けた。ICT機器の導入は今後さらに全国レベルで進捗していくと思われるが、これらの発表は、初等中等教育における学習者の思考力・判断力・表現力を効果的に育成する方法という観点から、そのモデルとなる授業形態を提案できた。 (3)最後に、現段階では学会発表のみの成果となるが、本研究からの波及効果として「プログラミング教育」への素地が教育現場に形成されつつあることも挙げておきたい。この点については、「今後の研究の推進方策」で改めて言及する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前掲の「研究実績の概要」からも分かるように、本研究はここまでおおむね順調に進捗している。本研究は、申請時に記載した「研究体制連携図」に即して、所属機関の「情報リテラシー教育プログラム」、仙台市教育委員会(および教育センター)、そして、他大学教員との協力のもとに進めてきたが、その連携体制が順調に機能してきた結果、教育現場の教員の意識改革、全国学会での成果発表など、ほぼ予定通りの実績を上げることができた。 なお、実践面では、研究協力校との取り組みによって初等中等教育のモデル授業を提案できたが、理論面については、アリストテレス研究に関する著書の一部として、理論的推論および実践的推論について思想史的な視点も含めた考察を提示することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本研究の最終年度となるが、これまでの3年間の研究は、仙台市教育センターや他大学教員との連携によって実施されてきたものであり、前項に記載したように、ほぼ順調に進捗してきた。くわえて、本研究の間接的成果として挙げておきたいのは、仙台市が5年計画(2017年度から)で市内の全小中学校に情報端末機器の導入を決定したことである。本研究では、こうした導入の方法とその活用についても検討する予定である。 最終年度では、「論理的思考の育成」に向けたこれまでの実践的研究のさらなる浸透を図るとともに、現場からの要望(そこには不安と懸念も交錯している)が高まりつつある「プログラミン教育」につながる作業にも着手したいと考える。文科省の「提言」によれば、「プログラミング教育とは、子供たちに[中略]将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育むことであり、コーディングを覚えることが目的ではない」と定義づけられているが、本研究での「対話型論理的思考」から「プログラミング的思考」への移行は、現場の教員にとっても極めて効果的・効率的に実行可能であると考えられる。こうしたプログラミング教育のあり方についての実証的調査研究の一部は、すでに学会発表として公開しており、今年度も継続して実施していく予定である。
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