17世紀に登場した新しい自然観は、外界に物理的な性質のみを帰属させ、その一方で、色や音などの感覚的性質を観察者に位置付けた。しかし、この知覚図式は、外界の事物が色をもつという常識的立場に反するだけでなく、外界に実在する対象が不可知のものとなってしまうという矛盾を含む。 この研究では、知覚の因果的プロセスに関する科学的証言を尊重しつつ、かつ外界に色などの質的性質を保証するような知覚論を構築し直すことを試みた。その際に、外部世界についての主観的記述を基礎として、そこに因果的プロセスの客観的記述を組み込むことで質的知覚論を再構築することが可能となり、その逆ではないことが示された。
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