研究課題/領域番号 |
15K01983
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
小野原 雅夫 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70261716)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 哲学カフェ / 哲学プラクティス / 子どものための哲学 / 定言命法 / 技術的仮言命法 / カント |
研究実績の概要 |
2016年度は当初の計画通り、月1回のペースで計12回の「てつがくカフェ@ふくしま」を開催することができた。7月に地元の映画館フォーラム福島で開催された「第9回シネマdeてつがくカフェ」においては、森達也監督作品『FAKE』を鑑賞し監督を交えての哲学カフェを行い、過去6年間で最高となる110名の参加者を集めることができた。8月には福島県立図書館とタイアップして「図書館とは何か?」をテーマとする哲カフェを行ったり、11月には福島県立美術館とタイアップして視覚障害者の方々とともに「触って、話して、見て楽しむワークショップ」を開催したりなど、新しい地域との連携を深めることができた。 また「てつがくカフェ@ふくしま」とは別に新たな活動を開始することもできた。8月には若者を対象とした「第1回U-19てつがくカフェ@ふくしま」を開催し、「学校の勉強は本当に必要か?」をテーマに高校生や大学生たちにテツガクカフェを体験してもらった。9月からは「てつがくカフェ@ふくしま」の常連の方々を世話人として「てつがくカフェ@あいづ」が立ち上がった。立ち上げにあたって助言指導したり、第1回ではファシリテーターを務めるなどのサポートをし、すでに3回(年度内2回)開催され軌道に乗ってきている。 5月には静岡で始まった「死生学カフェ」を視察し、カフェ前後の世話人打ち合わせの会にも参加させていただいて、いろいろとノウハウを学ぶことができた。そのアドバイスにしたがって、福島で死生学カフェを開きたいと言ってくださった方にグリーフケアアドバイザーの資格を取ってもらったりした上で、11月より「びえもカフェふくしま」を立ち上げることができた。 こうした活動を検証する研究として、法政哲学会第36回大会と日本カント協会第41回学会で学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【研究実績の概要】に記したように、「てつがくカフェ@ふくしま」は順調に継続的に開催できたばかりでなく、県立図書館や県立美術館といった新たな地域との結びつきを生み出すことができた。また、静岡の死生学カフェの視察に行ったりした上で、「てつがくカフェ@ふくしま」の他に新たな活動を3つも生み出すことができた点においても、おおむね順調、またはそれ以上の成果と言うことができるであろう。 【研究実績の概要】欄には字数の関係で十分に記すことができなかったが、こうした活動を検証する研究として、法政哲学会第36回大会と日本カント協会第41回学会で学会発表を行うことができた点は、本研究の大きな進展であり、当初の計画を上回る成果と言えるだろう。法政哲学会第36回大会では、東京大学の梶谷真司氏、高千穂大学の齋藤元紀氏とともに「哲学カフェ@法政哲学会 市民とともに哲学するとは?」を開催した。通常のシンポジウム形式ではなく、哲学カフェの形式を用いて、出席者とともに哲学カフェをはじめとする哲学プラクティスの有効性について議論を深めることができた。また、福島大学で開催された日本カント協会第41回学会ではシンポジウム「3.11後の『公共』とカント Kant in Fukushima」の提題者を務め、現代日本の民主主義の現状と、そこにおける哲学カフェの意義について論じることができた。 以上により、2016年度に関しては「当初の計画以上に進展している」と評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度以降は、子どものための哲学等の実践を視察したり福島でも開催したりといった活動に取り組んでいきたい。2016年度には「第1回U-19てつがくカフェ@ふくしま」を開催することができたが、残念ながら参加者も少なく、第2回以降を実施することができていない。今後は街なかで開催するよりも、学校現場と連携していく道を模索したい。そのための足がかりとして、まずは勤務校である福島大学で哲学カフェを実施して大学生に興味をもってもらい、ファシリテーターの育成にも取り組んでいきたい。それを踏まえて県内の各学校に働きかけをできたらと考えている。 理論的検証に関しては、まずは、2016年度の2つの発表を論文化するとともに、民主主義との関係性ばかりでなく、教育における効果の問題も視点に入れて研究を深めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研費で開催する最大のイベント「てつがくカフェ@ふくしま〈3.11〉特別編6」の開催が年度末の3月11日であったため、その会場費や旅費等の確定が学内の予算執行期限を過ぎてしまい、残額がいくらになるかはっきりしなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は僅少であるため、旅費や物品費のなかで合算してしようすることが可能である。
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