研究課題/領域番号 |
15K01984
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
檜垣 良成 筑波大学, 人文社会系, 教授 (10289283)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バウムガルテン / カント / 形而上学 / 自然神学 / 目的論 |
研究実績の概要 |
1. アレクサンダー・ゴットリープ・バウムガルテン(Alexander Gottlieb Baumgarten)の『形而上学』(Metaphysica, 1739 Halle. 4. Auflage, 1757)第4部「自然神学」(theologia naturalis)の「神の意志」および「神の行為」を検討する前に、そもそも「自然神学」とはいかなるものであるか、そして、「神の意志」の前提となる「神の知性」とはいかなるものであるかを、『形而上学』の先行するテクストを踏まえて明らかにして、その部分のテクストの本邦初訳を活字化した。
2. 特に『形而上学』第4部「自然神学」第1章第1節のテクストを徹底的に再検討して、「最も完全な有」(ens perfectissimum)としての「神」の概念が、バウムガルテンにおいては、それのうちに最多最大の実在性(realitas)があるところの「最も実在的な有」(ens realissimum)である(§ 805,804)ということの意味を、「否定性」(negatio)や「存在」(exsistentia)、そして「必然的有」(ens necessarium)の概念にも注意しながら明らかにした。その際、神の「聖性」(sanctitas)や「全能」(omnipotentia)についても解明された。
3. また、「神の意志」の前提となる「神の知性」のあり方についても考察を深めた。「知性」とは「判明な認識」の能力であるが、「判明な認識」が一つの「実在性」であることに注目して、「最も実在的な有」である神に最高の知性を帰するところにバウムガルテンの特徴がある。神の「全知」(omniscientia)を、「直観」、「最高の理性」、「知恵」(sapientia)、「思慮」(prudentia)といった側面から明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バウムガルテンの『形而上学』のテクストを再検討するという研究目的を持続的に遂行できた。昨年度の「有論」の基礎の再検討に引き続いて「自然神学」のテクストそのものの検討を進めた。「有論」の再検討を踏まえて「神学」のコンテクストもより正確に把握できている。
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今後の研究の推進方策 |
『形而上学』第4部第1章の「神の知性」についてのテクストに見いだされる「知恵」(sapientia)、「思慮」(prudentia)、「全知」(omniscientia)の検討を踏まえて、「神の意志」について論じた第890節から第925節を検討する。「最高善」の理解のためには神における「慈悲」(bonitas) と「正義」(iustitia) を明らかにすることが不可欠である。カントの最終的見解は、神の「慈悲」は「神聖性」によって規定されるというものである。そして「慈悲が神聖性によって規定されること」が「正義」にほかならない。バウムガルテンにおいてこれらの道徳的属性がいかなる関係にあるかを慎重に吟味する。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数の残高を無理に使用せず、次年度予算と合わせて、バウムガルテンおよびカントに関する研究のために有効に活用するため。
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次年度使用額の使用計画 |
1万円弱の金額であるが、次年度予算と合わせて、バウムガルテンおよびカントに関する研究のための研究資料代として使用予定である。
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