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2015 年度 実施状況報告書

ケアの社会倫理学の方法論的定礎(脱集計化と記憶のケアを軸として)

研究課題

研究課題/領域番号 15K01985
研究機関国際基督教大学

研究代表者

川本 隆史  国際基督教大学, 教養学部, 教授 (40137758)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードケア / 社会倫理学 / 脱集計化 / 記憶の修復
研究実績の概要

発達心理学者キャロル・ギリガンの問題作『もうひとつの声』が活写した「ケアの倫理」は、「正義の倫理」への対抗軸として打ち出されたものだが、本書の刊行を契機に始まった「ケア対正義」の論争においては、個々のニーズへの即応というアド・ホックな側面が強調される余り、「ケアの倫理」の方法論の究明がいささかおろそかになったきらいがある。本研究はその不備を埋めるべく、ケアの倫理の方法論を「脱集計化」(厚生経済学者アマルティア・センの手法)と原爆被爆の当事者および二世との交流を通じてその重要性を学んだ「記憶のケア」という二つの軸に沿って練り上げようとするものである。初年度は研究の基礎固めに精力を集中し、(1)各種のケア現場へ赴いての参与観察、(2)関連文献の収集と読解、(3)国内の研究協力者との連携という三つのパートすべてにわたって一定の実績を積み重ねることができた。特筆すべき成果の一つに、下記5)のトップに挙げた論集への寄稿がある。副題に記したように、「脱集計化」について事例を挙げながら少々詳しく論じたものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度の応募時点においては国立大学法人・東京大学(大学院教育学研究科)の所属であったが、交付が決定した段階では私立大学(国際基督教大学教養学部)に異動していた。そのため本研究プロジェクトのスタートと並行して、新任教員として初めて担当する科目の準備や、授業方式の相違(三学期制、70分授業を週に2ないし3コマ開講する)に対応することにも精力を傾けざるを得なかった。これが「当初の計画以上に進展している」を選べなかった主たる理由である。

今後の研究の推進方策

初年度に引き続き、以下の三本柱をもって今後の研究を推進する。
1.「脱集計化」および「記憶のケア」にかかわる各種現場の実態調査――医療、看護、介護、教育といった各種のケアの現場において、そうとは名づけられていないものの「脱集計化」や「記憶のケア」が巧まずして実践されている。こうした取り組みの実態を参与観察する。
2.ケアの社会倫理学に関わる文献の収集と読解――研究課題に関連する①社会倫理学・応用倫理学、②厚生経済学・社会的選択理論、③社会福祉学・ケア理論の基本図書および関連資料を広く国内外から渉猟し、その読解を行なう。
3.国内の研究協力者との連携――国内に研究協力者を求め、ケアの社会倫理学に関連する所見や資料の提供を受ける。

次年度使用額が生じた理由

応募時点では国立大学法人に所属していたが、交付の段階で私立大学に異動した。初年度は新規担当の科目の準備や学事暦・授業方式の違い(三学期制、70分授業)に慣れる必要に迫られたため、国内調査出張の回数を応募段階で見込んでいたものより少なくせざるを得なかったからである。

次年度使用額の使用計画

初年度の出張の不足を補うほか、適宜、「設備備品費」「消耗品費」、「謝金」(資料整理)にも充当する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] 正義とケアの編み直し――脱中心化と脱集計化に向かって2015

    • 著者名/発表者名
      川本隆史
    • 雑誌名

      東京大学教育学部カリキュラム・イノベーション研究会編『カリキュラム・イノベーション』(東京大学出版会)

      巻: none ページ: 179-194

  • [雑誌論文] ヤクザな師との〝すれちがい〟の記もしくは出しそびれた質問状2015

    • 著者名/発表者名
      川本隆史
    • 雑誌名

      『現代思想』10月臨時増刊号《総特集●鶴見俊輔》(青土社)

      巻: none ページ: 118-128

  • [雑誌論文] 〝連続講座 花崎皋平〟を回顧する――「三人称のわたし」はひらかれたか2015

    • 著者名/発表者名
      川本隆史
    • 雑誌名

      『アジア太平洋研究』(成蹊大学アジア太平洋研究センター)

      巻: 40 ページ: 39-51

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 〈心の純潔〉と〈コミュニティの価値〉――キルケゴール、ブルンナー、ロールズ2016

    • 著者名/発表者名
      川本隆史
    • 学会等名
      第9回ICU哲学研究会シンポジウム
    • 発表場所
      国際基督教大学
    • 年月日
      2016-03-05
    • 招待講演
  • [学会発表] 『試行』と『思想の科学』を学びほぐす(Unlearning)――ひとりの読者の私的メモ2015

    • 著者名/発表者名
      川本隆史
    • 学会等名
      社会思想史学会第40回大会・セッションD戦後思想再考
    • 発表場所
      関西大学千里山キャンパス
    • 年月日
      2015-11-07
  • [学会発表] 人間・正義・幸福――「ケアの正義」ということ2015

    • 著者名/発表者名
      川本隆史
    • 学会等名
      かわさき市民アカデミー「人間学再論」
    • 発表場所
      川崎市生涯学習プラザ
    • 年月日
      2015-07-16
    • 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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