研究課題/領域番号 |
15K01987
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
中野 裕考 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (40587474)
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研究分担者 |
浜野 喬士 早稲田大学, 文学学術院, 招聘研究員 (20608434)
山蔦 真之 名古屋商科大学, 経済学部, 講師 (50749778)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カント |
研究実績の概要 |
平成27年度は、 理論哲学をこれまで主なフィールドとしてきた研究代表者中野裕考がとりまとめを行った。山蔦、浜野からも提案を受けながら、基本的には中野が検討箇所を選定し、共同研究の俎上に乗せた。ただし共同研究に関しては三人の間に優先順位はなく、平等に批判的考察を交換していった。検討主題としては、一七八〇年代後半のカント哲学における理性と感情の関わり、自己感情の問題。理論哲学と美的判断の親近性。注目点は、個別的な経験的認識がどのような仕方で、道徳的評価の対象となる行為および自然の合目的的統一性と関わっているのかという点にある。認識が実質的には行為および合目的性と不可分であるという連関を、カントのテクストに徹底して基づいて示すことが目標となる。この研究成果は、山蔦がすでに4月24日に開かれたカント研究会例会にて「崇高、あるいは美?――『判断力批判』における善と美の問題について――」と題して発表を行った。そこでは、批判期カントにおいて善との関わりが強いのは、従来多くの解釈者が述べてきたように崇高であるよりも、むしろ美の方だったとの新しい見解が示された。さらに70年代の覚書の分析に基づいて、この見解が「生」の概念と深い関係をもっていたという解釈の試みがなされた。ただこの解釈の根拠づけはいまだ十分ではなく、再検討の必要性が指摘されたため、今年度以降に継続して研究する予定である。また6月下旬には、中野が『純粋理性批判』第12節の超越概念論を検討することから、三批判書の体系的連関を解釈する発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記したように、中野が取りまとめ役となり、山蔦、浜野がそれぞれの観点から研究を進めることができている。また実際に研究発表も行われており、いまだ十分ではないとはいえ成果が形を表し始めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に変更はなく、今年度は山蔦が取りまとめ役となり、そのもので中野、浜野がそれぞれの観点から批判哲学の体系性について考察を加える。順次カント研究会などの場を借りて成果報告を行い、広く他の研究者からの教えを受けていく。
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