研究課題/領域番号 |
15K01988
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
藤野 寛 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 教授 (50295440)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アドルノ / 美学 / 倫理学 / 同一性 / 非同一性 / 芸術 / 弁証法 / モダン |
研究実績の概要 |
この研究は、研究代表者が長野県立短期大学元教員の西村誠氏と過去約30年間にわたって続けてきたアドルノ『否定弁証法』読書会と、研究代表者が過去10年間、一橋大学大学院言語社会研究科所属の大学院生を中心とする人々と続けてきたアドルノ『美の理論』研究会 ― 2010年度からは西村誠氏も参加してくださっている ― を、今後さらに4年間継続し、その上で最終年度に成果の集大成を形として公にすることを目指すもので、2015年度はその初年度に当たった。 2015年度の成果は二種類に大別できる。 一つは、東京でほぼ月に一度のペースで、より具体的には、5月2-4日(二泊三日の合宿)、6月20日、7月26日、9月4-6日(二泊三日の合宿)、10月25日、11月21日、12月20日、1月23日、2月20日、3月19-21日(二泊三日の合宿)に、読書会を開催したことで、合宿では、アドルノの1966年の論文「芸術と諸芸術」を読み議論した。 第二は、研究代表者が、8月(正確には、6、7、10、11、12、13、14日の七日間)にベルリンの芸術アカデミーに属する「ベンヤミン・アルヒーフ」に赴き、アドルノが1961年の夏学期に行った『美学講義』の講義草稿を筆写したことである。この講義はこの夏学期に19回、続く冬学期に12回行われ、1964年の『美学講義』と共にアドルノの美学理解にとって重要な文献であり刊行が待たれているものでありながら、現時点では未だその予定が立っていない。従って、これを一部分とはいえ筆写して日本に持ち帰れたことの意味は小さくないと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
毎月の学習会と、年に三度企画した二泊三日の合宿学習会を、成果をもって予定通り実施することができた点では、順調に進捗している。 問題は、研究代表者がベルリンで行った『美学講義』の筆写で、今回、7日間開館から閉館までぶっ通しで筆写したにもかかわらず、合計31回行われた講義のうち4回分しか書き写すことができなかった。これは、方針の誤りを示すものと考えざるをえない。限られた滞在期間に講義原稿を筆写するには研究代表者の筆写能力はあまりにも低いのであり、二年度目以降は、全文を筆写するのではなく、まず講義の全体を通読し、その内容を要約する形で要点のみ書き取る、という進め方を採用しなければならないと考えるに至った。(ちなみに、この講義原稿は、部分的にカメラ撮影することは不可能ではないのだが、全体をコピーして持ち帰ることは許されていない。)
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今後の研究の推進方策 |
2015年度同様、毎月の学習会と、また、年に二度企画している二泊三日の合宿学習会を、成果をもって予定通り実施してゆきたい。 夏に計画しているベンヤミン・アルヒーフでのアドルノ『美学講義』の筆写については、全文を筆写するのではなく、まず講義の全体を通読し、その内容を要約する形で要点のみ書き取る、という進め方を採って、遅れを挽回したい。
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