• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

アドルノ倫理学の研究 - 美学との関係の中で

研究課題

研究課題/領域番号 15K01988
研究機関國學院大學

研究代表者

藤野 寛  國學院大學, 文学部, 教授 (50295440)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード倫理学 / 美学 / 現代芸術 / 経験 / アドルノ / ベンヤミン
研究実績の概要

20世紀ドイツ哲学を代表するテオドール・W・アドルノは、音楽理論家、美学者としてはその評価が定まっているといって過言でないが、その倫理学については、必ずしも十分に研究されてきたとは言い難い。アドルノを哲学的思索へと駆り立てたのは、美しい何ごとかに対する感動という経験であったのか、それとも、世の不正に対する憤りであったのか。一言でいえば、アドルノにとって、より重要であったのは、美的経験なのか、それとも倫理的経験なのか。この問いを携えて、アドルノの思索を、倫理学と美学の関係という問題に焦点をあてつつ改めて検討することが、本研究の課題である。
具体的には、第一に、長野県立短期大学元教員の西村誠氏と申請者が30年来続けているアドルノ研究会を、何人かの新しいメンバーも迎えて今年度も継続した。月に一度のペースで5月、6月、7月、10月、11月、12月、1月、2月、3月に読書会を行った。(午前の部は、アドルノ『美学講義1958/59』の読書会とアドルノ『否定弁証法』の読書会に分かれ、午後の部は全員でアドルノ『美の理論』を読んだ。)夏季休暇中の9月には、二泊三日で合宿を行い、アドルノの短いエッセイを読み切った。
第二に、この研究会の一環として、ドイツのビーレフェルト大学より、アドルノ美学研究において実績のある研究者エバーハルト・オルトラント氏を招き、講演会を実施した。
第三に、申請者が、ベルリンのヴァルター・ベンヤミン・アルヒーフに所蔵されているアドルノの遺稿の内、1960/61年の『美学』講義のタイプ起こし草稿を閲覧し、筆写した。(アドルノの遺稿は現在遺稿全集として続々と刊行中ではあるが、1960/61年の『美学』講義については、現時点では未だ刊行の予定がたっておらず、コピーして持ち帰ることも許容されていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

第一に、もともと2017年度に招聘を計画していたビーレフェルト大学のエバーハルト・オルトラント氏を、先方のご都合から一年早めてお招きすることになり(2017年3月)、國學院大學において講演していただいた。(なお、オルトラント氏は、今回の滞日中に、さらに一橋大学、独協大学、京都日独文化センターでも講演された。)
第二に、申請者は、ベルリンのヴァルター・ベンヤミン・アルヒーフに収蔵されているアドルノの遺稿の内、アドルノ『美学講義1961/62』のテープ起こし草稿を閲覧し、筆写するということを、この研究の中心課題の一つとしているが、当初予定していた2016年8月15日から26日だけでなく、2017年3月27日から30日にもベルリンに赴き、この作業を続行することができた。

今後の研究の推進方策

基本的に、当初の計画に従って、第三年目の研究を進める。
具体的には、第一に、西村誠氏と続けている「美学研究会」を月に一度のペースで行い、アドルノの基礎テキストを講読する。9月には二泊三日の合宿を行う。
第二に、この研究会の枠内で、ドイツより、アドルノ美学研究者をお招きし、講演会、あるいは合同研究会を行う。現時点では、ベルリン自由大学教授のゲオルク・ベルトラム教授を候補として考えている。
第三に、申請者が、ベルリンのヴァルター・ベンヤミン・アルヒーフに赴き、アドルノ『美学講義1961/62』のテープ起こし草稿を閲覧し、筆写する作業を継続する。
第四に、本研究の成果をそれぞれ研究会メンバーが論文の形にまとめ、共著論文集として公表したいと考えるので、その実現に向けた準備に着手したい。

次年度使用額が生じた理由

エバーハルト・オルトラント氏の講演会が3月中旬に行なわれたため、これに関連する謝金等の支払いが、次年度繰り越しとなった。

次年度使用額の使用計画

上記の謝金として使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「個人的なことは政治的なこと」の意味するところ - その誤解に次ぐ誤解について2017

    • 著者名/発表者名
      藤野寛
    • 雑誌名

      個人的なことと政治的なこと - ジェンダーとアイデンティティの力学

      巻: 1 ページ: 19-38

  • [雑誌論文] 二十世紀のキルケゴール?-テオドール・ヘッカーとは何者か2016

    • 著者名/発表者名
      藤野寛
    • 雑誌名

      新キェルケゴール研究

      巻: 第14号 ページ: 1-20

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 日本哲学、こと始め2016

    • 著者名/発表者名
      藤野寛
    • 雑誌名

      國學院雑誌

      巻: 第一一七巻 ページ: 1-16

  • [図書] 「承認」の哲学 - 他者に認められるとはどういうことか2016

    • 著者名/発表者名
      藤野寛
    • 総ページ数
      245
    • 出版者
      青土社

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi