研究課題/領域番号 |
15K01990
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
大須賀 史和 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (30302897)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ロシア / 言語哲学 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、20世紀初頭のロシアにおける言語哲学的な議論である「名の哲学」の研究、特にソ連時代初期に独自の体系的記述を目指したA.ローセフの哲学の研究を目的とし、同時代の諸外国における哲学分野の研究成果の受容等も考慮に入れつつ、ローセフの構想の内実と今日における意義を検討することを主要課題としている。 今年度はこれまでの研究成果を精査し、また計画年度以前に発表済みの論文・報告等の内容の再検討を行いながら、ローセフ哲学が持つ意味合いを総括的に提示するための作業を行った。1927年刊行の『名の哲学』はローセフが構築しつつあった言語哲学的体系の概略を提示したものだが、それは単体で成立するものではなく、古典学研究に基づく世界観や人間観を基盤とし、音楽などの芸術とも共通する表現とコミュニケーションの形式についての考察と深く関連するものである。名を中心とする言葉は単にそれが表す対象と結びつけられた無味乾燥な記号なのではなく、人間によって理解された物が言語化したものであり、その際には物を取り巻く様々な出来事の歴史をも意味として内包したものであり、その意味ですべての名が神話として存在するという観点に立っている。それは古典的な神話と世界観の一体化に典型的に見られるものであり、世界を美的に捉える視点をも自ずと内在するものである。こうした一体性がローセフの構想の根幹を形成しているという結論に達した。 以上のような研究結果は様々な成果報告の形で公表する準備を進めている。その一部は国際会議で報告し、そこでの質疑応答を踏まえてさらなるブラッシュアップを予定していたが、本研究課題に適したテーマの国際会議が2020年5月に開催されることから、計画期間の延長を申請した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果自体はすでにほぼ固まっており、国際会議等での研究発表による質疑応答等を通じたブラッシュアップを待つのみとなっている。計画期間が延長されたことで、追加的な検討も行う余裕があり、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行で海外渡航ができない状態が続いているという問題があるため、当初予定していた海外の国際会議での発表が危ぶまれるが、研究の遂行そのものが阻害されているわけではないため。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症の世界的な流行が継続している状況のため、当初予定していた国際会議報告を別の成果報告の形に変更する可能性があり、それに伴い研究報告集に盛り込む内容が一部変わる可能性があるが、状況の変化に応じて、柔軟に対応しつつ、これまで蓄積してきた研究成果を適切に公開することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
発表の場として適切な国際会議が2020年5月に開催されることになったことから、計画延長を申請したため。主たる費目が海外渡航旅費と研究報告集の作成費用であり、いずれも次年度に繰り越す必要があったため、今年度は支出ゼロとすることにした。
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