研究実績の概要 |
フッサール初期時間論のテキスト分析を実施するとともに、ドイツ、フライブルク大学のフッサール・アールヒーフを訪れ、フッサールの草稿を確認しながら、下記の(2)の研究を行った。(1) Husserliana Bd.X Zur Phänomenologie des inneren Zeitbewusstseins (1893-1917)に収録されているテキストの成立年月を確定し表を作った。具体的には、Husserlianaの編纂者Rudolf BoehmとPhB版編纂者Rudolf Bernetによる成立年月の推定を整理し、時期を区分し、一覧表を作成した。(2) Husserliana Bd.Xに収録されている時間意識の変化を表現している図(ダイアグラム)のそれぞれの解釈をおこない、その意味を明らかにした。具体的にはS.28、S.93、S.199、S.210、S.230の各図の分析をおこなった。(3)Husserliana Bd.Xに収録されているテキストに関する、1966年以来の先行研究の検討。特にPhB版編纂者BernetのEinleitungとRudolf Bernet, Iso Kern, Eduard Marbach, Edmund Husserl, Darstellung seines Denkens (1989)と英語への新訳を行ったJohn Barnett BroughのTranslator’s Introduction, in: Edmund Husserl Collected Works, On the Phenomenology of the Consciousness of Internal Time (1893-1917)(1991)などを検討した。また、(4) Husserliana Bd.Xの成立時期に接して書かれた認識論の講義、すなわちHusserliana Bd.XXIV, Einleitung in die Logik und Erkenntnistheorie Vorlesungen,1906/07における初期認識論の基本的構図と「時間意識と時間構成」の章の分析を行った。さらに、認知言語学関係の研究では、Donald W. LangackerのDonald W. Langacker: Subjectification, in: Concept, Image, and Symbol: The Cognitive Basis of Grammar (1991)の分析を行った。
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