研究課題/領域番号 |
15K01998
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 進化論と倫理 / 道徳心理学 / 功利主義 / 規範理論 |
研究実績の概要 |
本研究は、「進化論は倫理に対してどのような含意を持つのか」というテーマについて、規範理論の一つである功利主義を擁護する論者がどのようにこのテーマに取り組んできたかという視点から検討を行うものである。H27年度は以下の研究を中心に行なった。 1. 「J.S.ミルやシジウィックといったいわゆる古典的功利主義者たちが、どのような理由から進化論を受け入れなかったか」という問いについて、先行研究および関連文献を網羅的にサーベイし、進化論と功利主義についての歴史的および理論的な関係について検討を行った。なお、関連文献の収集にあたっては、申請者が所属する研究科の大学院生の補助を受けた。 2. Scott M. James, An Introduction to Evolutionary Ethics (2011), 内井惣七『進化論と倫理』(1996)など、進化論と倫理に関する文献を精読し、この分野の現状および論点に関する正確な理解を得た。現在の進化論および生物学一般について理解を深めるために、基本文献を収集し、詳しい検討を行なった。 3. 上記の文献研究を行なったほか、Evolutionary Debunking Argumentsについての論文を書いているGuy Kahane(オックスフォード大学ウエヒロ実践倫理研究所)を本学に招き、セミナーを開催するとともに、進化心理学について意見交換を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進化論と倫理に関連する精読すべき文献が当初の予想以上に多かったため、年度中に論文にまとめて発表するに至らなかった。その代わりに、現在、書籍として研究内容を発表する準備が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も前年度の研究を進めると共に、以下の研究を実施する。 1. 進化論と倫理の関係について論じたピーターシンガーの主要な著作(Peter Singer, The Expanding Circle (1981), A Darwinian Left (2000), ‘Ethics and Intuitions’ (2005), The Life You Can Save (2009)など)および二次文献を精読して、シンガーの進化論理解の正確さ、直観主義を批判するためにどのように進化論を用いているか、また近年の認知心理学系の実証研究をどのように功利主義的な規範倫理に役立てているかなどを検討する。 2. 認知心理学および功利主義と進化論の関係について、功利主義や進化心理学の専門家との意見交換を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の業務で出張した際に本研究と関連する研究を行なっている研究者と意見交換することで、旅費の使用が抑えられた。また、文献調査に関わる人件費なども、当初予想していたほどには発生することなく目的を達成できた。
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次年度使用額の使用計画 |
文献収集には引き続き書籍代および人件費がかかると予想されるため、その費用に当てるつもりである。
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