研究実績の概要 |
本研究は、「進化論は倫理に対してどのような含意を持つのか」というテーマについて、規範倫理の一つである功利主義を擁護する論者たちがどのようにこのテーマに取り組んできたかという視点から検討を行うものである。H29年度は以下の研究を中心に行なった。 1. 前年度の文献研究の成果を受け継ぎ、「19世紀イギリスのいわゆる古典的功利主義者たちが、どのような理由から進化論を受け入れなかったか」という問いについて先行研究および関連文献の網羅的にサーベイし、進化論と功利主義に関する歴史的および理論的な関係について検討を行った。また今年度も、関連文献の収集にあたり、申請者が所属する研究科の大学院生の補助を受けた。 2. 上記および前年度までの文献研究を通じて得た知見を基に、京都哲学会(2017年11月, 京都大学)でおよびイギリス哲学会(2018年3月, 武蔵野大学)にて、それぞれJ.S.ミルやハーバート・スペンサーの思想を中心とする進化倫理学を検討した成果を発表し、研究討議を行なった。 3. 日本語の読者が進化倫理学の概要を知る手がかりとなるよう、Scott M. James, An Introduction to Evolutionary Ethics (2011, Wiley-Blackwell)の日本語訳を『進化倫理学入門』(スコット・ジェイムズ著、児玉聡訳、2018年、名古屋大学出版会)として出版した。
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