研究実績の概要 |
今年度は、実在論的アプローチと反実在論的アプローチを歴史的観点から調停する具体的手法を提案し、複数の国際会議等でその内容を発表した。まず、分析哲学史の最新の研究成果に基づき、分析形而上学をドイツ・アメリカを中心とするカント伝統と、イギリス・オーストリアを中心とするアリストテレス的伝統に区別し、反実在論的アプローチからの批判が当てはまるのは後者であり、前者に関しては、従来の分析形而上学ではあまり参照されないE. CassirerやD. C. Williamsの議論に基づく応答が可能であることを示した。その内容は、2018年8月に台北(台湾)で開催された4th Conference of Contemporary Philosophy in East Asia (CCPEA 2018)、同月にハンブルク(ドイツ)で開催されたJP-HH Philosophy Workshopおよび12月に東京で開催されたRationality, Representation, and Reality Workshopで発表し、分析哲学の専門家に加え、哲学史研究の専門家との議論を行った。加えて、9月に開催された山口大学哲学研究会でも発表し、美学や倫理学など分析哲学以外の哲学研究者の観点からのコメントをもらうことができた。これらの発表によって明らかとなった不十分な点については情報収集を実施し、現在、論文を作成中である。また、研究成果を反映した論文「分析哲学と科学哲学はどのように異なっているのか」が『科学哲学』第51巻2号に掲載された。加えて、前年度に引き続き、書籍の製作も順調に進んでいる。
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