研究課題/領域番号 |
15K02002
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
稲岡 大志 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (40536116)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ライプニッツ / モナドロジー / 数学の哲学 / 幾何学 / 無限小解析 / 図形推論 |
研究実績の概要 |
本年度は、ライプニッツの空間概念に関する研究、ライプニッツの数学研究において幾何図形が持つ推論上の機能に関する研究を進めた。前者の論点としては、後期の関係空間説に至る経緯に実体概念の展開が密接に関与していると考えられることを、空間の構成要素という観点に着目することで示した。具体的には、単純実体(モナド)が空間を構成するという図式が見られるのは後期以降であり、したがって、ライプニッツが初期から一貫して同じ空間構成の理論を保持していたとは言えないことを一次資料の読解によって解明した。また、最晩年のクラークとの往復書簡で表明されている、事物が相互に可能的に取る位置関係が空間を構成するという主張について、クラーク宛第5書簡における空間構成の議論の違いに着目し、それまでのライプニッツには見られなかった、空間概念の構成プロセスに関する議論が、104節の「抽象的空間」として萌芽的にあらわれていたことを解明した。これにより、ライプニッツの空間概念の展開を、点による線分の構成や単純実体による延長体の構成といった連続体合成の問題における「構成プロセスの不在」という観点から解明することで、ライプニッツの知的業績全体だけではなく、デカルトの永遠真理創造説からカントの超越論的観念論に至る哲学史的経緯に位置付けることができる見通しを得ることができた。
後者の論点としては、初期のパリ滞在時の数学研究について、アカデミー版全集の数学部門に収録されている遺稿を検討し、ライプニッツに強い影響を与えたパスカルの数学草稿と比較した上で、無限小解析を中心としたライプニッツの数学論文において図形がどのような推論上の役割を担っていたのか、それがライプニッツの画期的な業績にどのように結びついているのかを解明する研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中期以降のライプニッツの数理哲学の展開を解明する着眼点の一つとして、「概念の構成プロセス」が有効であることを示すことができ、今後の研究を進める上での作業仮説の構築ができた。また、初期数学研究の遺稿を図形推論という観点から研究することで、ライプニッツの数理哲学の特徴を明らかにできる見通しも得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はライプニッツの数学関連の手稿を分析し、図形が持つ推論上の機能を分析する研究を継続させ、また、これに並行して、中期以降の手稿の分析も進め、空間概念の展開と実体概念の展開の関連の解明を進める。
また、2017年11月に開催予定の日本ライプニッツ協会大会において、ライプニッツの位置解析や数理哲学、数学史に関する海外の研究者を招聘して特別講演を開くこと、および、研究会を複数開き、意見交換を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究図書の購入が当初の見込みより少なめであったこと、および、研究発表の開催地が近距離であったことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
研究図書や備品の購入、研究発表や意見交換のための旅費、海外からの研究者の招聘、国際会議の開催などに使用する予定である。
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備考 |
学会発表の資料などを公開している。
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