研究課題/領域番号 |
15K02003
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
三宅 岳史 香川大学, 教育学部, 准教授 (10599244)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ベルクソン / 哲学史 / 技術の哲学 |
研究実績の概要 |
平成30年度は『道徳と宗教の二源泉』(以下『二源泉』と略記)第四章で論じられる技術というテーマについて研究を進めた。コントの実証主義は科学がまず発展して、その応用として技術が発展すると考え、その思想はフランスで大きな影響力を持った。これに対してベルクソンは科学と技術が別の性質をもつことを明言している。 技術に関するこのような見解をベルクソンはどこから得たのかを調べるために、『二源泉』第四章で示される二つの参考文献を研究する計画であったが、そのうちGina LOMBROSO, La Rancon du machinismeは、原著がイタリア語のフランス語訳であり、入手も難しかった。そのため、先にPaul MANTOUX, La Revolution industrielle en Angleterre au XVIIIe siecleを研究した。 この著書は、イギリスの産業革命を論じているが、著者はそこで、産業の発展が商業を発展させるというよりは、商業の発展が産業を発展させることを強調している。この見解は、必要が技術的発明の精神を喚起するのであり、その逆ではないというベルクソンの考えを裏付けるものである。このことは科学と異なる技術の性格づけにも関連し、ベルクソンの技術に関する発想の源の一つがMANTOUXの研究にあるのではないかと推察された。 その他に、このテーマに関する先行研究を幾つか研究するうちに、ベルクソンの技術論を批判したジョルジュ・フリードマンの著作を注目するに至った。フリードマンは二重狂乱の法則や、技術と神秘主義の協働といったベルクソンの考えを批判しているが、技術の発展の暴走をどう制御すればよいか、という『二源泉』の問題設定を共有している。フリードマンの議論は、いわゆる「人工知能」が発展した今日でも現代性を失っておらず、『二源泉』の今日的な文脈の一つを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度(平成30年度)の計画は、全体としては予定通りであるが、Gina LOMBROSOの文献が手に入りにくく、解読が遅れるなど一部遅れが見られる。また昨年度以前計画についても調査が残っているところが少し残っているが、新たに調べたいことなども出てきている。これまでの計画を整理しながら、順次、成果をまとめていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
来年度(平成31年度)は最終年度であるが、まずはこの年度の研究テーマに挙げた社会的包摂と宗教的なものの関係や、そこにベルクソン哲学の実証的形而上学という方法がどのように関わるのか研究を行いたい。次に、これまでの年度の成果を発表しつつ、同時に調査が残っているテーマについて重要なものから研究を行う。いわば三つの作業を行うことになるが、残りの時間を考慮に入れながら、全体をまとめることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については、購入予定の書籍が絶版で購入できなかったり、相互貸借やコピーが科研費を使えなかったりなどの要因によって、予定より大きく余っているが、新たに研究すべき課題もでてきており、また最終年度の製本・印刷などで使用すれば予定の額を使用すると思われる。旅費も最終年度でこれまでの成果を研究発表することによって用いる機会が増大すると考えられ、残額も含め使用見込である。
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