研究課題/領域番号 |
15K02003
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
三宅 岳史 香川大学, 教育学部, 教授 (10599244)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | モダニズム(キリスト教) / ベルクソン / スピリチュアリスム / エデュワール・ル=ロワ / 科学と宗教 |
研究実績の概要 |
令和3年度は当初の計画では、ジーナ・ロンブローゾの文献を手に入れて『道徳と宗教の二源泉』第四章の技術論の研究をまとめる予定であったが、ベルクソンの弟子であるE.ル=ロワとの関係を調べる機会があり、本研究にとってはそれが重要なテーマであることが判明したため、そちらを中心に研究を進めることになった。 ル=ロワはロワジーやラベルトニエールらなどとともに、モダニズムと呼ばれるカトリックの立場と見なされるが、結局20世紀初めのこの運動は当時の教皇ピウス10世により批判され、衰退することになった。この立場は直観や実践を重視するもので、ベルクソンやスピリチュアリスムの見解とも重なるところが多い。ル=ロワの思想はベルクソンを後追いしたものと見られがちであるが、運動としてはベルクソンに先んじる面もあることが分かった。ベルクソンはしばしば科学と哲学については融和的関係を主張するが、科学と宗教の関係については、科学と哲学の関係ほど前面的に出てこない。 本研究の最終年度には『道徳と宗教の二源泉』から読み解いて、改めてベルクソンが科学と哲学と宗教の関係についてどのように考えているのかを明確化する必要があることが判明した。そのための準備作業として、ブトルーの科学と宗教の関係についても比較のために文献調査を行った。ブトルーは宗教と科学の関係についてはベルクソンよりも主題的に論じており、ウィリアム・ジェイムズやデュルケームなどとの関係から自らの考えを洗練させていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は当初予定になかったが重要である研究テーマがでてきたため、そちらに専念したため、昨年の進捗の遅れを取り戻すことができなかった。ただし、予定のうち残っているのは、ジーナ・ロンブローゾの技術論のまとめなので、それをなるべく早いうちに行い、そののちに、いろいろと研究の中で出てきた新たな問題を扱うことにしたい。 また今年度は、『道徳と宗教の二源泉』第二章のレヴィ=ブリュールやデュルケームの民俗学や社会学との関係について研究発表をして、それに関する論文もまとめた。まだ未発表の研究に関しても順次、発表を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
『道徳と宗教の二源泉』第四章の技術論のまとめを今年度前半で行い、後半では最終年度報告をまとめる予定である。時間に余裕があれば、『道徳と宗教の二源泉』第二章のピエール・ジャネの宗教心理学の展開などをさらに調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症拡大のため、旅費についてはまだ使用されずに残っている金額も大きいが、物品費についてはすでに予定していた金額について使用し切っている。あとは、報告書の製本のために「その他」で残していた金額が残っているが、これは最終年度で全額使用する見込みである。また今年度もコロナ感染などで旅費が発生しない場合は、報告書の製本の費用にまわす予定である。
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